東北電力管内(新潟を含む東北7県)の今夏の電力需給は、需要に対する供給余力を示す予備率が一度も10%を切らず、安定的に推移した。火力発電所の復旧や節電意識の定着もあり、原発の運転停止が続く状況下でも需給が逼迫(ひっぱく)する状況は回避された。
東日本大震災で被災した原町火力発電所(福島県南相馬市)の復旧などにより、東北電のピーク時供給力は約1500万キロワットまで回復した。
今夏の最大電力需要(1時間平均)は8月19日の1322万キロワットで、夏前の猛暑時想定(1441万キロワット)、昨夏の最大実績(1364万キロワット)を下回った。東北電はピーク時供給力を1502万キロワットまで高め、予備率は13.6%だった。
今シーズンで予備率が最も低下したのは、8月13日の11.2%。工場などのお盆休暇を見込み、一部火力を停止させるなどしたため供給力が一時的に落ちた。
需給が「やや厳しい」(予備率8〜10%)、「厳しい」(同3〜5%)とされる水準に迫ることは一度もなかった。
想定を下回る需要について、東北電は「気温が低めに推移したことや、利用者の節電効果が影響した」と分析している。8月の酷暑が土日、お盆期間に集中したこともピーク需要の抑制につながったとみられる。
昨シーズンは、記録的な残暑に見舞われた9月18日、火力のトラブルによる停止も重なり、予備率が一時4パーセント程度まで急落。東京電力などから最大60万キロワットの融通を受ける事態となった。今夏は需給に影響する運転事故はなかった。
原発抜きで夏場の余力が生じたことで、利用者から再稼働に疑問の声が出ることも想定される。東北電は「老朽火力を稼働させるなどした結果にすぎない。安定供給に向け、原発の必要性は変わっていない」と説明している。