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【社会】

台風一過ほど遠く… 18号大雨から1週間

 台風18号による大雨の被害から二十三日で一週間。京都・嵐山では復旧作業が続くが、秋の観光シーズンを前に風評被害を懸念する声が上がる。初めて発表された気象庁の特別警報をめぐっては、住民から効果を疑問視する声も目立ち、自治体の周知に課題を残した。

◆京都・嵐山 戻らぬ観光客

 「ガラガラですわ」。晴天に恵まれた三連休中日の二十二日、嵐山の桂川沿いにあるレストラン。休日はいつも二百台の駐車場が満車になるが、止まった車は半分以下。レストラン経営会社の男性(62)は肩を落とした。

 従業員総出で泥をかき出し、台風翌日の十七日には営業再開にこぎ着けた。「テレビで何度も洪水の映像を見て『嵐山あかん』と思うのかな。被害はごく一部なのに」

 紅葉が見ごろになる十〜十一月は「書き入れ時」。名所の一つ「京都嵐山 美空ひばり座」が五月に閉館し、京福電鉄嵐山線の嵐山駅前には空き地が目立つなど“地盤沈下”が叫ばれていた時だけに、追い打ちを掛けられた格好だ。

 「私たちは元気です! できる限りの真心で皆様をおもてなしします」

 地元商店街が急きょホームページ上に連名で出したメッセージには危機感がにじみ出る。商店主ら約五十人でつくる「嵐山青年会」は台風被害を受け、元気な嵐山をアピールする行事を検討中。メンバーの若杉一利さん(46)は「父祖から受け継いだ嵐山。さびれさせるわけにはいかない」と気を引き締める。

◆特別警報 対応ばらつき

 一方、重大な自然災害が起きる恐れが高まったとして福井、滋賀、京都の三府県に気象庁が初めて出した特別警報。住民への周知をめぐり、自治体間でばらつきが出た。

 滋賀県栗東市は発表数分後に無線で連絡。京都府福知山市も約三十分後に無線やメールで伝えたが、大津市は約一時間後にホームページに掲載したのみ。

 京都府京田辺市や滋賀県竜王町など四市町では「住民の混乱を招く」などの理由で周知さえしなかった。

 特別警報はそもそも役に立ったのか。浸水被害に遭った嵐山の飲食店や住民からは「今回はピンとこなかったが、次から気を付けられる」との声もあったが「携帯電話が古いからか、鳴らなかった」「受信した時には既に浸水していた」と疑問視する声も目立った。

 静岡大防災総合センターの牛山素行准教授(災害情報学)は「自治体は避難勧告や指示を出すかどうか判断する作業に忙殺され、周知に時間を割くのが難しい」と指摘し、自動的に周知する仕組みづくりの必要性を強調。「住民や自治体が活用しやすく改善すべきだ」と話す。

 

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