関東社会人リーグ1部のホーム最終戦でゴールを決めて喜ぶ甲能(手前)らさいたまSCイレブン=15日、鴻巣陸上競技場 |
埼玉サッカー界の草分け的存在で、関東社会人リーグ1部に所属するさいたまSCが日本フットボールリーグ(JFL)へ―。さいたまSCは埼玉教員サッカークラブが前身で創部60年目を迎えたアマチュアの名門チーム。9月末までにJFLへ入会申請を行い、日本のアマチュアサッカーのトップを目指して本格始動する。
■今月下旬申請へ
15日、鴻巣陸上競技場で行われたホーム最終戦後、松沢喜久夫代表がグラウンドに立ち、「次のステージへ頑張っていきます。関係者、サポーターの皆さまの応援があってこそ。今後もよろしくお願いいたします」と新たな挑戦を宣言した。秋山健二監督も「しっかり努力していきます」と続けた。
7月下旬、JFLから入会の申請を促す連絡が届いた。Jリーグは来季から3部に当たるJ3が新設され、JFLの18チーム中12チームが参入を表明した。審査で全てがJ3に入らないにしても、多くのチームが去ることになる。そこで、さいたまSCにJFL昇格の声が掛かったのだ。松沢代表は「行けるときにやらないと。今がチャンス」と、すぐに行動に移した。
■60周年の名門
さいたまSCの歴史は古く、1953年に埼玉教員サッカークラブとして設立された。過去、国体の教員の部で9度の優勝を飾り、82〜83年にはJリーグの前身である日本サッカーリーグ(JSL)2部に所属。2000年に埼玉SC、08年にさいたまSCへ名称変更した。関東社会人リーグ1部を4度制するなど結果を残してきた。
現在は49人の選手が所属し、ほぼ全員が埼玉県出身者。教員チームの伝統は継承され、秋山監督は庄和高校、甲能光主将は鳩ケ谷高校で教壇に立つなど、25人が教員(臨時採用含む)と約半数を占める。社会人だけでなく、学生も名を連ねる。全体練習は水、土曜日で試合の修正点の合わせを行う。基本的には「個人で走る、鍛えるのがベース」(秋山監督)だ。
■アマ選手の受け皿
現在、JFLに埼玉のチームはない。さいたまSCが入会を希望する大きな理由が、アマチュアの頂点に所属することで、Jリーガーへの夢をつなぐクラブになりたいということだ。プロを希望しながらも高校、大学卒業時にかなわなかった選手や、Jクラブから戦力外とされながらも、もう1度チャレンジしたい選手たちの受け皿の役割を担う。松沢代表は「サッカーを通じ、夢と希望、活力を与えたい」と力を込める。
さいたま市にはJ1浦和、大宮があるが、アマチュアチームを貫くことで、両クラブとは違った存在意義を発揮する。
浦和東高出の太田康介選手が中央大卒業後、05年に加入し、06年にJ2草津(現群馬)の選手となった例もある。チーム最長13年目で市浦和高出の大野恭平選手は、「大学を出てJFLやプロに行きたくて、テストを受けたこともある。ずっと上でやりたい気持ちを持っていたので、チャンスがあればやりたい」と意気込む。
JFLは法人でないと入会できないため、年内のNPO法人化へ向けて奔走中。入会金や、全国を転戦する遠征費などの運営費が約6千万円必要で大きな課題となる。そのほか試合や練習会場確保などクリアすべきことは多い。入会承認の可否は年内に決まる見通し。あふれる情熱を胸に、夢の達成へ全力を尽くす。