シャッター通り2年半で空き屋ゼロ 別府駅の北高架商店街 [大分県]
JR別府駅北側の高架下にある築47年の小さな商店街「北高架商店街」に異変が起きている。2011年3月には全13店舗のうち9店が空き店舗という典型的な「シャッター通り」だったが、若手商店主の出店が新たな出店を呼び込み、今月5日の美容室の開業で空き店舗はゼロに。カフェや雑貨、服飾など若者向けの店舗に老舗の飲食店も混在、老若男女が集う商店街の店主たちは「にぎわいを一過性にせず、周囲にも広げたい」と張り切っている。
■復活の象徴に
商店街は1966年、駅周辺の高架化とともに開業。約50メートルの通路両側に4~8坪ほどの小さな店が並び、当初は全てが飲食店だった。しかし、別府観光の衰退とともに空室が増え、老朽化も重なり、管理会社には解体して駐車場にする考えもよぎっていたという。
流れを変えたのは2人の商店主の出店だった。木部真穂さん(42)は同商店街に思い入れのあった地元出身の夫とともに2011年4月、商店街入り口の角地にカフェを出店。「より多くの人が集う場所にしたい」と店内に作家の芸術作品を展示。夜などは別の人に店を貸し、カフェバーに姿を変えた店は昼とは違う客層も集めている。
地元出身の日名子英明さん(43)は同年8月にレコード店を開店。「古くて暗くて決していい物件ではなかった。北高架が別府の衰退の象徴のように感じられたからこそ、あえて出店して街の復活の象徴にしようと思った」と理由を語った。
■イメージ一新
2人は商店街のイメージの一新に乗り出す。木部さんは管理会社の協力を得て、地元の画家に依頼し、商店街の壁や柱に絵を描いた。日名子さんは昨年4月から毎週土曜日に商店街の通路でフリーマーケットを開催。新たな客を商店街に呼び込むのに成功。さらに出店者が商店街を気に入り、洋服店を開店。昨秋は空き店舗を地元の芸術イベントの会場に。訪れた別府市の山形裕子さん(41)が「駅に近いし、個性的な商店や経営者がいることも魅力的」とその空き店舗に今年1月に雑貨店を開店するなど、若手店主の出店が相次いだ。
■不思議な空間
新たに出店した店主がファッションショーを開くなど、斬新なイベントが相次ぎ、商店街には客足が絶えない。
このような若手店主の取り組みに、1978年からラーメン店を営む広戸敏雄さん(69)は「さびれていた商店街に活気が戻った。若い店主には『大いにやって』とお願いしている」と歓迎。フリーマーケットに出店した日出町の山田彩さん(35)も「おしゃれな店も昔ながらの店もあり、新鮮さも落ち着きも感じられる不思議な空間が魅力」と気に入っている。
しかし、北高架が栄えても、別府の中心街には空き店舗が多い。日名子さんは「商売を続ける姿を見せることで『別府に店を出したい』と考える人を増やしたい」と話している。
=2013/09/23付 西日本新聞朝刊=