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学徒出陣 半数で学生の数が今も不明
9月23日 15時46分

太平洋戦争での学徒出陣からこの秋で70年となり、NHKが全国の大学などを対象にアンケート調査を行ったところ、半数が徴兵された学生の数を把握できていないことが分かりました。
回答を集計した結果、およそ4万人が徴兵され、犠牲者はおよそ4000人に上っていますが、実際にはこれを上回るとみられ、70年たった今も実態把握が進んでいない現状が浮かび上がりました。

太平洋戦争で、大学生らが学業の志半ばで戦地に赴いた学徒出陣では、戦況が悪化するなか、70年前の昭和18年9月に学生の徴兵猶予が取り消され、順次徴兵されました。
徴兵された学生は全体でおよそ5万人とも10万人とも言われていますが、国に記録が残されていないため、NHKは、戦前からある大学や旧制高校を引き継いだ全国の170の大学や団体にアンケート調査を行いました。
この結果、合わせて92校が徴兵された学生がいたと回答しましたが、学生の数を把握しているのは半数の49校にとどまり、残る43校は資料が失われるなどして数が分からないとしています。
このほか、徴兵された学生がいるか分からないと回答した学校も46校に上っています。
回答を集計した結果、およそ4万人が徴兵され、犠牲者はおよそ4000人に上っていますが、実際にはこれを上回るとみられ、70年たった今も実態把握が進んでいない現状が浮かび上がりました。
学徒出陣について研究している慶應義塾大学名誉教授の白井厚さん(83)は、「学徒出陣については、資料が空襲で焼けるなどして正確な数字が分からないのが現状で、今回の調査結果は、数字が出てきたこと自体に意味がある。大学として、先の大戦に対しどうすべきだったのか、深く研究する必要があるのではないか」と話しています。

“70年”調査難しく

学徒出陣について、NHKは先月下旬から今月20日にかけて、戦前からある大学や、旧制高校などを引き継いだ大学など、全国の合わせて170の大学や団体を対象にアンケート調査を行い、91%に当たる154校から回答がありました。
このうち、学徒出陣した学生が「いる」と回答したのは92校、「いない」と回答したのは16校で、「分からない」と回答したのは46校でした。
学徒出陣した学生がいると回答した92校のうち、出陣学徒の人数を把握していたのは53%に当たる49校で、集計した結果、4万345人となりました。
47%に当たる43校は人数は分からないとしています。
一方、犠牲となった学生の数を把握しているのは37%に当たる34校で、集計した結果、4108人となりました。
63%に当たる58校は、人数は分からないとしています。
ただ、回答の中には、おおまかな数字だとしている学校も多くありました。
また、アンケートでは、学徒出陣に関する遺品や証言の収集を学校として行うかについても尋ねました。
この結果、学徒出陣した学生が「いる」、または「分からない」と回答した138校のうち、33校がすでに実施したか今後実施する予定だと回答しましたが、実施する予定はないとする回答も94校に上りました。
各学校に、学徒出陣の調査の内容や、調査が難しい点について尋ねたところ、「空襲などにより、当時の文書類が一部なくなっている」とか、「本人や遺族との連絡が難しい」といった回答や、「戦後、大学が変遷しており、その際にかなりの資料が失われている」といった回答もあり、ある大学は「関係者の高齢化や世代交代が、資料の散逸だけでなく、資料や情報の逸失につながっており、早期の対策が必要である」としつつも、「予算や保管場所の確保などの点で困難な状況にある」と回答しています。
一方で、今も遺品や証言を集めたり、資料の展示や元学徒の講演会を続けたりしている学校も多く見られました。

国にも記録残されず

学徒出陣の全容については、国に記録が残されておらず、その定義も定まっていません。
学徒出陣については、大学を所管する文部科学省や、旧軍人・軍属の記録を管理する厚生労働省、それに戦史を研究している防衛省にも、全体の人数が分かる記録は残されていません。
このため、多くの研究者が調査してきましたが、およそ5万人と推計したものや、およそ10万人としているものがあります。
多くの資料が失われていることに加え、その定義が定まっていないことも、調査を難しくしています。
今回のアンケートでは、昭和18年9月21日に文系の大学生らの徴兵猶予が取り消されて以降、徴兵された学生を対象としました。
ただ、徴兵猶予が取り消される前の昭和16年12月から始まった繰り上げ卒業で在学期間が短縮され、軍に入った学生も学徒出陣に含めるという考え方もあり、定義は定まっていません。

実態把握進んだ大学も

NHKのアンケートに回答を寄せた学校の中には、最近改めて調査を始めた結果、実態の把握が進んだという大学もあります。
東京・千代田区の法政大学は、去年4月、学徒出陣の専門チームを作り、5年計画で調査を始めました。
まず、太平洋戦争末期から終戦直後までの期間の合わせて44冊の卒業名簿を基に、およそ8000人について、「学徒出陣」という記述があるか、休学して軍に入ったという記述があるか、確認しました。
また、これまでに12人の元学徒から新たに話を聞きました。
大学では学徒出陣の人数を、およそ20年前の平成2年の段階でおよそ870人としていましたが、今回の調査で、その3倍近い少なくとも2480人が学徒出陣していたことが分かったということです。
ただ、休学したまま戦死し、復学できなかった学生は、卒業名簿に含まれていないため、大学では、卒業名簿以外の記録を調べたり、元学徒の卒業生から聞き取り調査を行ったりして、実態の把握を進めたいとしています。
法政大学教授で、大学史委員会の委員長を務める馬場憲一さんは、「あと10年早ければ、より多くの元学徒が生きていたので、調査が遅かったという反省がある。どのような思いで戦地に赴いたのか、戦地でどのような経験をしたのか、正確に記録していくことが、大学にとっての大きな課題だ」と話しています。

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