|
台風18号の影響で16日、「一生に1度程度」しか体験しない危険が迫ったことを示す気象庁の「特別警報」が県内に発令された。栗東市では土砂崩れで民家が全壊し、女性が死亡。各地で堤防が決壊するなどし、1万人以上が避難した。
「『ゴゴゴー、ドンドン』という大きい音と震動で一睡もできなかった」
栗東市目川で16日午前6時すぎ、金勝(こんぜ)川の堤防が決壊した。川沿いで暮らす主婦の宇野佳子さん(59)は声を震わせた。
決壊の1時間半ほど前、ベランダから外を見ると、庭の畑と、その向こう側の土手が丸ごとえぐられ、自宅が川にのみ込まれそうになっていた。ぼうぜんとしていると、隣の家の塀が「バリバリ」と音を立てて川に崩れ落ち、車2台があっという間に流された。
宇野さんは同居する長男と次女を連れ、近くの長女宅に避難した。自宅は川面に向かって大きく傾き、中に入れなくなった。「着の身着のまま逃げてきた。これからどうしたらいいのか」と途方に暮れる。
2軒隣の会社員木村剛史さん(41)も庭が流された。築10年の中古住宅を5年前に購入。家族4人で暮らしてきた。「普段は穏やかで、大人がまたげるほど小さい川。こんな状況は想像できなかった」という。
高島市宮野では午前5時半ごろ、鴨川の堤防が決壊し、下流の同市鴨の住民が孤立した。嘉田由紀子知事は午前9時に自衛隊に災害派遣を要請。約30分後、自宅2階で助けを待っていた夫婦と親子の2世帯4人が県警と消防、自衛隊にゴムボートで救助された。
近くの市生涯学習センターには120人以上が避難した。鴨川下流に住む林すゑさん(82)は「お嫁に来てから60年以上住んでいるが、こんなことが人生であるなんて。上流の知り合いが心配」と話した。同市鴨の農業高橋修さん(60)は軽トラックを駐車場の柱にくくりつけて逃げた。「水が腰ぐらいまで来た。おばあちゃんは消防の人におんぶをしてもらって逃げた」と振り返った。
ここから広告です
朝日新聞大津総局です。【母なる湖】琵琶湖のほとりから最新のニュースをお届けします。ご意見・ご感想をメールでお寄せください。
メールはこちらから
朝日新聞大津総局
別ウインドウで開きます