ペナントを手に場内一周する原監督(中央)ら=東京ドーム
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◇巨人2−1広島
セ・リーグは22日、首位巨人の2年連続35度目(1リーグ時代を含め44度目)の優勝が決まった。デーゲームで2位阪神がヤクルトに6−7で敗れて優勝が決定。ナイターで巨人は広島に2−1で競り勝ち、2007年から3連覇して以来の2連覇に花を添えた。日本シリーズ進出を争うクライマックスシリーズ(CS)は10月12日から始まり、巨人は16日からのファイナルステージでファーストステージの勝者と対戦する。
愛するわが城で、高く、宙に舞った。連覇達成。原監督は満面の笑みを浮かべて歓喜の輪に向かった。スタンドからは「バンザイ」の声。何度も拍手を送った指揮官はナインの手に身をゆだねた。1度、2度−。両手を高くあげて、現役時の背番号と同じ8度、舞った。
「全員が勝利のために個の力、時には自己犠牲を持って戦ってくれました。見事な選手たちだと思います」。6度の優勝回数を「(自分を)少し褒めてあげたい」と語ると「戦いは続きます。懸命に戦ってまいります」と声を張り上げた。
満員のスタンドから祝福の拍手がわき起こったのは1回裏の攻撃が始まる直前だった。午後6時3分、ヤクルトとデーゲームを戦っていた阪神が敗戦。1回表終了を待って、東京ドームのスコアボードに「神6−7ヤ」の文字が浮かび上がった。
腕組みをしてグラウンドの戦況を見つめていた原監督も軽く手をたたき、最初の目標であるリーグ連覇を喜んだ。
ライバルを大きく引き離しての連覇。原監督の思いが結実した。宮崎キャンプ開始を翌日に控えた全体ミーティング。指揮官はこんな言葉とともにチームを船出させた。
「今年は連覇を意識します。全員、そう思ってください。そうでなければ、ジャイアンツのユニホームを着る資格はないと思ってください」
今季は王者として、王道を進むという決意だった。挑戦者ではない。他の5球団の攻勢を正面から受けて、最後にはハネ返していく強さを目指した。
そのため、時に非情になった。5月26日のオリックス戦(東京ドーム)では村田を「心技体に準備不足」と1回限りで交代させた。8月に村田が調子を上げてくると阿部を3番、村田を4番にし、さらに主砲復活を後押しした。
中軸への送りバントのサインもためらわず、勝利投手の権利を得る目前の5回途中で先発を代えることもあった。
「大したことはないよ…」。9月8日の阪神戦(甲子園)で4番の村田に送りバントのサインを出した指揮官は、サラリとこう言った。勝利への最善策を考え抜き、実行する。「チーム全員で戦う」と語って振るうタクト。選手は「それが監督の野球だ」と当然のように受け入れ、6月13日に首位の座を奪い返してから一度もライバルに明け渡さずゴールした。
時に若手の起用もいとわなかった。ここにも信念がある。「若いのは1軍に上げたらすぐ使う」。親しい人に語った言葉は藤田元司さんに学んだ情。実生活で旬のもの重視になった指揮官は「積極的ならば怒らない」と腹を決め、中井や笠原、橋本ら若手の旬を見定めた。
気を抜く日はない。昨季のCSで中日に追い込まれた記憶も新しい。古典が説く「百里を行く者は九十里を半ばとす」という言葉をかみしめ、コーヒー片手に「また始まる」と奮い立った。その一方、読書で心を落ち着かせる。歴史ものや「海賊とよばれた男」で知られる百田尚樹の著書を手にすることが多い。
描かれているのは上杉鷹山、出光佐三といった義に生きた先達。生きざまから信念を貫くことを学び取る。そして、情と非情を、信念を基に織り交ぜる。すべては勝利という「大義」のためだ。
長嶋茂雄、野村克也両監督を抜き、三原脩さんに並ぶ6度目のリーグ制覇。だが、今はまだ道半ばだ。最終目標は2年連続日本一。夢の続きがある。壁はぶち破る。「今は野球が楽しくて仕方ない」と語る将が、王道を正々堂々と突き進む。(川越亮太)
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