性同一性障害:性別変更、人工授精「父子」認めず 大阪家裁「生物学的血縁ない」
毎日新聞 2013年09月14日 東京朝刊
心と体の性が一致しない性同一性障害のため、性別を女から変更した兵庫県宍粟(しそう)市の男性(31)が、第三者の精子を使った人工授精で妻(31)が産んだ次男(1)との親子関係の確認を求めた訴訟で、大阪家裁は13日、請求を棄却した。久保井恵子裁判官は、男性の戸籍に性別変更が記されており、「男性と次男の間に生物学的な血縁関係がないのは明らか」と判断した。男性側は控訴する方針。
訴状などによると、男性は2008年3月、性同一性障害特例法に基づいて性別を変更し、翌月に妻と結婚した。昨年春に次男が生まれ、本籍地の東京都新宿区に出生届を出した。しかし、同区は「性別を変えた男性に生殖能力はない」として、結婚した夫婦の子である嫡出子と認めず、非嫡出子として扱い、次男の戸籍の父親の欄を空白にした。
性別変更がない夫婦でも、第三者からの精子提供で生まれた子はいるが、役所の窓口では精子提供の有無は確認できないため、嫡出子として扱われている。訴訟では、血縁関係がなくても法律上の親子関係が認められるかが争点だった。
判決はまず、「民法は、血縁関係の存在を前提として法律上の親子関係を定めており、自然生殖以外の父子関係を想定していない」と指摘した。
そして、男性と妻が性交渉で次男を妊娠していないことが明白である以上、「妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定する」という民法772条の規定の「推定」が及ばないと判断した。【渋江千春】