無人機の運用で国がルール検討開始9月21日 17時7分
防衛省が大型無人機の導入を計画したり、国内の研究機関が無人機を開発したりしていますが、日本の航空法に無人機の運用について定めがないため、国がルール作りに向け、検討を始めました。
軍用や民間用の無人機の開発が世界各国で急速に進んでいますが、国内でも防衛省がアメリカ軍の大型無人機の導入を計画したり、JAXA=宇宙航空研究開発機構が去年、災害時に情報収集を行う無人機を開発したりしています。
しかし、日本の航空法は航空機を「人が乗ることができる」飛行機やヘリコプターなどとしているため、無人機の運用について定めがなく、模型飛行機などを想定し、空港から離れた場所の高度150メートル以下で飛行するよう求めているだけです。
ただ、最近の無人機は大型化し、高いところを飛ぶものも多く、民間機との空中衝突や異常接近を回避する仕組みが必要となっているため、国土交通省は、無人機を運用する際のルールづくりに向け、検討を始めました。
無人機について欧米では▽離陸や着陸の許可、それに飛行高度の変更などパイロットに無線で伝えている管制官の指示を無人の飛行機にどう伝えるかや▽地上から遠隔操作するパイロットの操縦資格、それに▽機体の安全性の基準をどのように定めるかといった点が課題として指摘されています。
国土交通省は各国の取り組みについて調査を進め、どのようなルールが必要か検討することにしています。
軍用の無人機は人道上の問題も
今月、東シナ海で中国の無人機が日中中間線を越えて一時、沖縄に接近し、無人機の存在が国内でも注目を集めるようになりました。
中国ではさまざまなタイプの無人機の開発が進められていて、なかには翼の下にミサイルのようなものを搭載した機体もあります。
中国のほか40か国以上が無人機の開発技術を保有しているとみられ、このうちアメリカはパキスタンなどで、武装勢力を狙って無人機による攻撃を行い、多くの民間人が巻き込まれて死亡したと指摘されています。
これについて国連のパン・ギムン事務総長は先月、大学での講演で「攻撃能力のある無人機はほかの武器と同じように国際人道法などの規制を受けるべきだ」と述べ、アメリカに慎重な運用を求めました。
無人機の開発・導入進む
日本では情報収集のための無人機の開発や導入が進められています。
このうち東京大学などの研究グループはデジタルカメラを搭載し、GPSの位置情報を基に指示されたコースを自動で飛ぶ、全長1メートル余りの無人機の開発を進めています。
また、JAXA=宇宙航空研究開発機構は災害時に上空から情報収集するための全長1.6メートルの無人機を去年、開発しました。
そして現在は全長2.6メートルと乗用車ほどの大きさの無人機を日本原子力研究開発機構と共同で開発していて連続で8時間以上飛行できるようにして放射線量の調査などに活用できるか研究しています。
一方、防衛省はより大型の無人機の導入を計画しています。
この無人機はアメリカ軍の「グローバルホーク」で翼は幅およそ35メートルと小さな旅客機並で全長はおよそ13メートルあります。
攻撃能力を持たない偵察機でおととしの福島第一原発の事故では状況を監視するため、グアムから福島上空に飛行したこともあります。
防衛省は平成27年度以降、自衛隊に導入するため、調査に必要なおよそ2億円を来年度予算案の概算要求に盛り込んでいます。
国際的なルール作りも課題
LCC=格安航空会社の参入などで空のダイヤが過密になるなか、無人機の登場は各国にとっても大きな課題で欧米ではルール作りが始まっています。
このうちアメリカのFAA=連邦航空局は2015年までに無人機の飛行を今の航空管制に組み込むための計画をまとめるほか、ヨーロッパの航空当局も15年後には無人機を組み込むロードマップを示しています。
こうした動きを受けてICAO=国際民間航空機関は来年8月までに無人機に関するマニュアルをまとめることにしています。
航空工学が専門で東京大学大学院教授の鈴木真二さんは「無人機は遠隔操作で地上から操縦するので通信がつながらないとか、操縦と機体の動きのタイミングに差が出る可能性もあるので無人機に自動的に衝突を回避できるシステムを採用するなど安全に飛行させるためのルール作りが求められる」と話しています。
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