【ワシントン＝中山真】野党・共和党が多数を握る米議会下院は20日、政府機関の閉鎖を回避するための暫定予算案を賛成多数で可決した。10月から12月半ばまでの予算を手当てする一方、オバマ政権が進める医療保険制度改革の実施に必要な予算を打ち切る内容。オバマ大統領や与党民主党は拒否する構えで、政府機関閉鎖を回避できるかはなお不透明だ。

　米国の新年度予算は10月から始まるため、９月30日までに予算案を成立させなければ政府機関の閉鎖に追い込まれる。米議会では９月中の成立が難しいことから、短期間の予算を手当てする暫定予算を策定する方向で調整している。

　下院で可決した暫定予算案は野党・共和党が提案した。表向きは10月からの政府機関閉鎖を回避する内容だが、真の目的は医療保険制度改革の予算打ち切りだ。下院ではこれまで制度の廃止法案を何度も可決したが、上院ではたなざらしのまま。今回は政府機関の閉鎖を人質に取る形で、制度廃止に追い込む戦略を取った。

　オバマ大統領は20日、ミズーリ州で演説し「医療保険制度改革の予算打ち切りは2500万人もの米国人が健康保険に入ることを妨げ、公的保険に入っている何千万人もの高齢者から基本的な医療サービスをカットするものだ」などと強調。下院で可決した暫定予算案を批判した。

　一方、民主党が多数を握る上院は週明けにも医療保険制度改革の関連予算を盛り込んだ、別の暫定予算案を可決する方針だ。民主党のリード上院院内総務は、医療保険制度改革の予算を盛り込まない、いかなる暫定予算案も上院で可決することはないと強調。同日可決した下院案を「時間の無駄だ」と切り捨てた。

　共和党執行部内には当初、短期間の暫定予算を早期に可決して政府機関の閉鎖を回避し、10月にも上限に達する債務上限の引き上げ交渉でオバマ政権から社会保障予算の削減などの譲歩を引き出す戦略を描いていた。しかし、党内保守派の支持を取り付けるため、土壇場で予算打ち切りを盛り込むことにした。ただ、党内穏健派の中には「政府機関閉鎖になれば批判は共和党に向かう」との懸念も出ている。