大分県豊後大野市(旧清川村)で2005年に女性(当時61)が殺害された事件で、強盗殺人などの罪に問われたものの一審・大分地裁で無罪判決を受けた大分市の無職伊東順一被告(61)に対し、福岡高裁(服部悟裁判長)は20日、一審判決を破棄し、無期懲役とする判決を言い渡した。控訴審では、検察側が申請した警察官らを中心に50人以上が証人として出廷。弁護側が「有罪ありきの進行だ」と批判する異例の展開をたどった。
起訴状によると、伊東被告は05年3月8日、無職山口範子さん方で現金を盗み、同14日に山口さんの頭をコンクリート塊で何度も殴ったり首を絞めたりして殺害し、車などを奪った、とされている。
一審から被告と犯行を直接結びつける物的証拠はなく、伊東被告が自白したときの供述調書の信用性をめぐり、検察側と弁護側が真っ向から対立した。控訴審では、検察側が女性の車の運転席に付いた微物が、被告のDNA型と一致したとする鑑定書を新たに証拠として提出。公判は11年7月から計26回開かれた。
被告は捜査段階では容疑を認めたものの、その後、無罪を主張。10年2月の判決は「自白は他の証拠と整合せず、不自然な部分があり、不合理な変遷をしている」と信用性を否定。「犯人だと認定するには、合理的な疑いが残る」として無罪を言い渡した。