「道路使用許可」の最終結論は?
「法律の専門家」のH氏(=「法務博士」の称号を持つ)に、参考意見を聞く形で、例の「(街頭演説における)道路使用許可」の話をしたところ、意外にも、私・ドクター差別の見解と(かなり)異なる見解が示されました。何しろ「道路使用許可」という法律関係のことですから、普通なら、「自称・差別の専門家」よりも「正真正銘の法律の専門家」の言うことの方が正しい、となるのでしょうが、私・ドクター差別も、政党本部時代に数千回、自分の街頭演説だけでも2000回、議員の街頭演説の手伝いでも数百回と街頭演説に関わっており、(街頭演説に関することについては、法律も含めて)実践面での裏づけがあるつもりでいます。と言うわけで、「法律の専門家の言うことだから」と、「はい、わかりました」と簡単に引き下がるわけにはいかないのです。
と申しましても、これは、別に「個人的なプライド」とか、そういう話では毛頭ございません。街頭喧伝活動をする人にとっては、「道路使用許可が必ず必要なのか、そうでないのか」は、極めて大きな問題です。ですから、たとえ議論上の話とは言え、「白黒」をつける必要がある、というわけです。さて、皆さんは、以下のそれぞれの主張を比較して、どちらが(より)もっともらしい主張だと思われるでしょうか?
おっと、その前に、H氏は以前、「性差別を禁止する条例がある自治体と性差別を禁止する条例のない自治体では、性差別に対する対応が違って当然である」というような趣旨の発言をされていました。もちろん、各自治体(の条例)によって「細部は違う」ということは、「法律の素人」である私・ドクター差別も十分認識しておりますが、現行憲法下では、性差別を禁止する条例がある(たとえば)東京都では「性差別をしてはいけない」が、性差別を禁止する条例がない○○県では「性差別をしていい」とはなりません。「細部」ならともかく、「主たる部分」で、そのような「大きな隔たり」があったら大変、性差別を禁止する条例がない県に住んでいる人たちはたまったものではありません。
そもそも、現行憲法では、「すべて国民は、平等に、基本的人権が保障されている」はずです。だからこそ、「もし、性差別を禁止する条例がない県で、性差別をされて、その裁判を起こしたらどうなるのか?」と言えば、「憲法を間接適用し、民法等によって、その性差別を救済する措置がとられる」わけです。このように、現行憲法下では、住む都道府県(=地域)の違いで、活動する地域の違いで、取り扱いに「大きな隔たり」があること、人権の取り扱いに「大きな隔たり」があることは許されないのです。
であれば、東京都では「道路使用許可をとらなくても(原則)街頭演説はできる」けれど、神奈川県では「道路使用許可をとらないと(原則)街頭演説はできない」などという「大きな隔たり」が許されるはずがありません。ところが、東京都(=警視庁)の「見解」について、H氏は、「警視庁としては、(神奈川県警と違って)このような緩やかな運用をとりあえずしておいて、いざ取り締まりの必要が生じたら(神奈川県警と同様)規則を根拠に無許可街宣を取り締まる、という方針なのでしょう」とおっしゃっています。本当でしょうか?
「女性専用車両」賛成派は、自分の主張を正当化するために、よく自分勝手な解釈をします。「電車遅延」を私らの乗車のせいにする「賛成派」に、「では、なぜ、鉄道会社が私らを訴えないのか?」と言うと、「(普段は)面倒だからでしょう。(いざとなったら)訴えますよ」などと言います。H氏の理屈はこれと似ています。
いいえ、鉄道会社が訴えないのは、「裁判所が、国交省が、そして、鉄道会社自体が、女性専用車両への男性の乗車を認めている」からです。本を糺せば、現行憲法上、男性の強制排除はできないからです。同様に、東京都(=警視庁)が「道路使用許可をとらなくても(原則)街頭演説はできる」と認めているのは、現行憲法上、常識の範囲内で行われる街頭演説の妨害はできない、「言論の自由」の妨害はできないからです。
そもそも、「なぜ、『道路使用許可』なるものがあるのか?」を考えれば、自ずと答えが出ます。それは、演説をさせないためでも、商品の宣伝をさせないためでも、ビラの配布をさせないためでも、寄付を募らせないためでも、署名を求めさせないためでもありません。一にも二にも、「一般交通に著しい影響を及ぼさないで欲しい」からです。そのための「法律」であり、「規則」なのです。一般交通に著しい影響を及ぼすようなやり方で演説をしてはダメですよ、一般交通に著しい影響を及ぼすようなやり方で商品の宣伝をしてはダメですよ、一般交通に著しい影響を及ぼすようなやり方でビラの配布してはダメですよ、一般交通に著しい影響を及ぼすようなやり方で寄付を募ってはダメですよ、一般交通に著しい影響を及ぼすようなやり方で署名を求めてはダメですよ、ということです。
しかし、まあ、「いざ取り締まりの必要が生じたら」などという曖昧な基準で、警察に(自由気ままに)取締りをされたら、国民はたまったものではありません。警察という国家権力に「フリーハンド」を与えてしまいかねない、それを認めるかのような発言は、「法律の専門家」としては厳に控えるべきでしょう。憲法や法律で制約されるべきは、国民の権利ではなく、国家権力の方です。
また、「道路使用許可を必要としない」とした3つの裁判例(東金市中央公民館事件、有楽町事件2審判決、大阪駅東口事件)について、H氏は、「(この3つに)共通するのは「最高裁判所のものではない(下級審である)」、「街頭演説についての判例ではない(ビラ配りについての判例である)」」などと否定的な見方をされています。
と言うことは、H氏は、「最高裁判所のものではない(下級審である)」から、「参考にならない」とでも、おっしゃるのでしょうか? しかし、もしそうであれば、「女性専用車両」に関する例の「裁判(=大阪市営地下鉄御堂筋線の裁判、JR西に対する裁判)」も同じです。ところが、H氏は、これらの裁判については、「女性専用車両」に不当性を訴える際、(ごく自然に)引用されていた、と記憶しております。さて、この両者(=「道路使用許可」と「女性専用車両」)に、どんな違いがあるのでしょう? 「結審した裁判の判断」、「控訴審の判断」、それも「こちら(=街頭喧伝活動をする者)の主張に沿った裁判が3つもある」という事実は、こちらの「理屈」を補完する意味では、かなりのものでしょう。
なお、「街頭演説についての判例ではない(ビラ配りについての判例である)」というのも、こちらにとって、何ら「不利な材料」ではありません。なぜなら、ただ道路の隅に立って演説しているよりも、遥かに「一般交通に著しい影響を及ぼす」可能性の高いビラ配りですら、「道路使用許可を必ずしも取る必要がない」のですから、単なる演説が「道路使用許可を必ずしも取る必要がない」のは、論理的に考えれば「当たり前」だからです。
ところが、道路の隅に立っての演説ですら、「通行の邪魔になる可能性がある(=可能性がゼロではない)」と強弁する警察官がいます。「(道路の隅に立っての演説でも)通行の邪魔になる可能性がある(=可能性がゼロではない)から、道路使用許可は取らなければいけない。道路使用許可を取っていないで、(警察官に「警告」されたにもかかわらず)演説を続行すれば、逮捕する」などと強弁する警察官が(たま〜に)いるのです。と言うか、先日(6月6日)はまさにそうだったわけですが、こんな「とんでもない理屈」がまかり通れば、「あなたは痴漢をする可能性がある(=可能性がゼロではない)から逮捕する」、「あなたは人を殺す可能性がある(=可能性がゼロではない)から逮捕する」などという「とんでもないこと」もまかり通ってしまいます。
とは言うものの、単なる演説と違って、ビラ配りや署名活動の場合は、通行に入り込む形なので、「通行の邪魔をされた」と言われれば、それを「完全否定」することはなかなか難しいでしょう。ですから、念のため、変な言いがかりをつけられた場合を考慮して、ビラ配りや署名活動の場合は、「道路使用許可」を取っておいた方がよろしいでしょう。「道路使用許可」を取っておれば、度を越した通行妨害でなければ、相手も強く言えません。
さらに、H氏は、「東京都では警察の取扱・運用上、特段の事情がない限りは道路使用許可は不要となっているので、東京都内で行う街宣であれば逮捕等されることはない。しかし他の道府県に行ったりすればこの限りではない(公安委員会の規則によっても変わってくる)。ということです。」とおっしゃっています。しかし、前述の「いざ取り締まりの必要が生じたら」だとか、この「(警察の)特段の事情」などという曖昧な基準で、警察が(勝手に)取り締まったり、逮捕する、なんてことは、そもそもできませんし、決してあってはならないことです。先日(6月6日)の神奈川県の警察官の振る舞いは、(「相鉄の私有地である」という事実がなければ)それこそ、刑法193条「公務員職権濫用罪」にあたる可能性があります。
第百九十三条 公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の懲役又は禁錮に処する。
まあ、自称「差別の専門家」である私・ドクター差別から、正真正銘の「法律の専門家」であるH氏に進言申し上げるのは真に恐縮至極ですが、H氏は、(憲法で保障されている)国民の権利をいささか軽視されているのではないか、と思われるフシがございます。たとえば、これまでにも、「男性のある割合(たとえば、半数)以上が痴漢なら、女性専用車両が正当化される」と受け取られかねない発言をされておりましたし、「年齢差別」や「学歴差別」を肯定していると受け取られかねない発言もされておりました。この理由がどこにあるのかは定かではありませんが、1つの可能性としては、「法律」は、まさに「現実」を扱うものですから、「法律の専門家」として法律を重視すればするほど「現実肯定」になりやすい、ということもあるのではないでしょうか? その点、私・ドクター差別は「法律の素人」であるが故に、法律に囚われることなく、「差別の専門家」としての「判断」が可能になる、ということでしょう。
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結論的には、街頭演説に許可はいらないが、人が集まって交通を妨げた場合は、即刻中止をすれば問題ないと僕は考えています。あと、必要だというなら、その主張を裏付ける判例はあるんでしょうかね?再度調べてみまして、以下の2つのサイトの内容がドクター様の参考になれば幸いです。URLが長かったので、検索ワードをお知らせいたします。google等で検索して下さいね。
1つ目 【解説】 65 S35.3.3最一小判 街頭演説の許可制
2つ目 【辻説法は許可要らず!】 法のグレーゾーンで警察は金儲け? お話かわりますが、ドクター様のコメント読ませていただきました。とても感激しています、励みになるお言葉ありがとうございます。僕はドクター様の勇気ある活動が、選ばれし者たちを集め、活動の源になっていると思います。まだまだ社会は変わりつつある段階だと思いますが、これからもドクター様の力が必要です。健康等にはくれぐれも気をつけて下さいね。(大笑顔)
2013/6/13(木) 午後 7:54 [ 任意確認電話 ]
任意確認電話様
>街頭演説に許可はいらない
もしビラ配りや署名活動をする場合は、「道路使用許可を取っておいた方がいい」ということですね。
>【解説】65 S35.3.3最一小判 街頭演説の許可制
古い話ですが、この判例からすると、昔(=旧道交法で)は、逆に、「道路使用許可」があれば、通行の妨げをしてもよかったんですかね???
> 【辻説法は許可要らず!】 法のグレーゾーンで警察は金儲け?
「率直な疑問」ですね。この方は、まさかとは思いますが、その後(2011年11月以降)、逮捕されたのでしょうか???
2013/6/13(木) 午後 10:43
街頭演説は非常に難しい問題なんですね。調べれば調べるほどこのテーマの深さがわかってきました。一応の結論(基本的には許可は必要ない*根拠は有楽町の事件の判例)がでているかのようですが、グレーゾーンとも言えなくないので、逆にこの問題に安易に結論を断言してくるような警察官や賛成派などは、”実は無知なのに知ったふりをしている”ということが推定されると思います。ちょっと情報量が多くなってしまって申し訳ないのですが”パブリックフォーラムに関する意見”というのが最高裁で示されているようです。そしてご存知かもしれないですが『法令適用事前確認手続 (いわゆる日本版ノーアクションレター制度)』というものがあり、行政機関等の法令解釈等を確認できるようです。次のコメントにURLを載せますのでよろしければ参考にして下さい。
2013/6/14(金) 午後 7:24 [ 任意確認電話 ]
投稿がうまくいかなかったので検索ワードを載せさせて下さい。論点が少しズレているものありますが、よろしくご覧下さい。
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2013/6/14(金) 午後 7:44 [ 任意確認電話 ]
任意確認電話様
>基本的には許可は必要ない
いろいろお世話になりましたが、本日(6月14日)、神奈川県警本部に行って参りました。
結論を言えば、「1時間くらいのやり取りの末、私・ドクター差別の主張していたことに限りなく近い結論に至った」ということです。
詳しい経緯は、活動報告でいたします。
2013/6/14(金) 午後 10:19