こうしたインディーズゲームの開発者に目を付けたのが、ゲーム機の巨頭であるソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)とマイクロソフト。ここまでスマホゲームの台頭に押され続けてきたが、急成長したインディーズゲーム開発者を自社のゲーム機向けに取り込もうと躍起だ。
■無名の開発者に脚光
ゲームショウのSCEの巨大な出展ブースの片隅には、次世代ゲーム機「プレイステーション(PS)4」向けに3本の新作ゲームが紹介された。これは同社が欧米でヘッドハントしたインディーズ作品。この2年、先行して欧米では囲い込みを進め、最新鋭のゲームソフトとして迎え入れた。欧米では宣伝面での優遇や、開発資金援助のための基金も設立。日本でも、今年7月に社内に専門のインディーズ開拓チームを発足した。
対するマイクロソフトも今年8月にインディーズ発掘プロジェクト「ID@Xbox」を開始した。ゲーム開発キットを無償提供するなど、支援策を打ち出している。既に数百の案件が集まっているという。同社のバイスプレジデントのフィル・スペンサー氏は「我々にとっても大きなチャンス」と歓迎ムードをあらわにする。
ただ、インディーズ熱が高まることは、従来のゲームソフト業界が行き詰まっていることと裏腹だ。「現在のゲーム業界は『ファミコン』に始まり、(1990年発売の)『スーパーファミコン』の時代に趨勢が決した」とある業界関係者は言う。その間に企業同士の合従連衡はあったが、ソフト開発における新陳代謝は起こらなかった。
むしろ、高性能や高画質を追求し続けたために、開発コストは肥大化し、市場縮小もあって大手ソフト会社の業績は低迷が続く。インディーズ台頭の中、ソフト会社も変化を迫られる。
「ドラゴンクエスト」などで有名なスクウェア・エニックス・ホールディングス。4月にヒットタイトル「拡散性ミリオンアーサー」を生み出した。これは昨年にスマホ向けに同社が配信を始め、国内外で600万回のダウンロードを記録、それを携帯ゲーム機向けソフトとして投入した。
ゲーム機向けでも無料でネット配信し、ゲーム内の課金で設ける仕組みを採用する。課金ユーザーは2万人程度だが、「通常のソフト販売で40万~50万本相当の売り上げがあった」と開発者の安藤武博氏は言う。スマホで小さく産み出し、ゲーム機で大きく育てる「インディーズ的」な新方程式だ。
重厚長大化が続いたファミコン後のゲーム業界。インディーズの登場は、業界の新陳代謝を促す新たなカンフル剤となりそうだ。
(北爪匡)
[日経産業新聞2013年9月20日付]
人気記事をまとめてチェック >>設定はこちら
マイクロソフト、ソニー、インディーズゲーム、ソニー・コンピュータエンタテインメント、任天堂、スクウェア・エニックス・ホールディングス
ゲーム見本市「東京ゲームショウ2013」が19日開幕した。ソニーと米マイクロソフトの次世代ゲーム機がそろい踏みする今回、新たなソフトの獲得を競う。標的は「インディーズゲーム」。…続き (9/22)
トヨタ自動車の豊田英二最高顧問が17日、死去した。「世界のTOYOTA」の基盤をつくり、日本の自動車産業の国際競争力を高めた立役者だった。12日に100歳を迎えたばかりだった英二氏の生涯は、トヨタと…続き (9/17)
豊田英二氏が決めた米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携は、トヨタを「世界のTOYOTA」に飛躍させた。提携の舞台回しをつとめ、後も英二氏と親交を温めた伊藤忠商事の元副会長、J・W・チャイ氏が「英二…続き (9/17)
各種サービスの説明をご覧ください。
・ソニー対MS、インディゲーム青田買い競う 東京ゲームショウ開幕
・ルネサス、開発工程5分の1のマイコン開発
・ヨシダ、歯科医向けCAD/CAM
・スズキ、SUVの海外生産拡大
・NEC、企業向け蓄電システム 非常用電源に…続き