検証 「人生逆戻りツアー」 [言葉・文章]
5 「あなたを愛しています。クロード」 (75~100ページ)
今日も日が暮れてゆく。三月の寒い空を鳥が二羽急いで飛んで行った。太陽は白い光を斜めから投げている。
家の中は暖かかった。さっき焼いたばかりのパン。煮込み中のポトフのいい匂い。
クロードの帰りは遅いからそれまでにゆっくり煮込めるだろう。アンティークなサイドボードの上には家族の写真が飾られている。ほとんど娘たちの幼かった頃のものだ。
そしてふたりの結婚式の写真。ブーケを持った花嫁の頬に、花婿がうれし泣きしながらキスをしている。幸せだったわ、とっても……。でも私は今、新しい人生を選ぼうとしている。
(以上が75ページ、以下が76ページ)
イレーヌは窓辺のゆり椅子にゆったりと体を沈めて、暮れて行く空を眺めていた。
よくおばあちゃんもこうして外を見ていたわよね……
彼女が幼かった頃おばあちゃん(正しくはひいおばあちゃんであった)は彼女の家の近くに一人で暮らしていた。いつも窓のそばにゆり椅子があって、暖炉が燃えていてどこからかハープの香りがして、ソファーにはお手製のクッションが並べてあった。
おばあちゃんは優しいだけでなく、とても賢い人だった。イレーヌが遊びに行くと…(以下省略)
ここには、イレーヌの視点で描かれている場面(イレーヌの回想)と、第三者(著者)の目で描かれている場面(情景描写)とが混在しています( 蛍光表示 ⇒ イレーヌがクロードの帰りを待ちながら過去を回想している場面)。
75ページではイレーヌの視点「私は」で綴られています。しかし、次の76ページではいきなり著者の視点「イレーヌは」で始まります。読者の一部(大方の読者?)はここで「おやっ?」と思うはずです。行間を読むことに長けた人ならばここで場面が転換したことがすぐにわかるでしょう。しかし、そうでない人は一瞬どういう事かと戸惑うはずです。
そして、その直後(次の行)では再びイレーヌの回想場面に戻ります。「よくおばあちゃんもこうして外を……」。
回想場面とそうでない場面とを一目で区別できるような表記がしてあれば何ら問題はありません。しかし、この本では、そういう表記がまったくありません。少なくとも回想場面は「 」で区切る必要があるのではないでしょうか。
ウタマロさんに聞いてみようかと思います。果たしてどういう回答があるか……
人生逆戻りツアー ← 読書メーター
http://book.akahoshitakuya.com/b/4833419270
視点について
http://www.cam.hi-ho.ne.jp/kohei_i/writing/howto_shiten.html
>彼女が幼かった頃おばあちゃん(正しくはひいおばあちゃんであった)は
どうしてここで「正しくは……」となるのでしょうか。訳がわかりません。わかる方がおられましたら教えてください。
by クレーマー&クレーマー (2013-09-14 08:48)
「人称」は、少々大袈裟に言ってしまうと、段落ごとに変えても良いと、私は習いました。それを成し遂げるには、かなりの文章力が必要なわけですがね(苦笑)。しかし、文章力には自信があるからと言って5行ごとに「人称」がコロコロ変わってしまうのでは読者が混乱してしまうので(混乱させないだけの文才があれば別だが)、せいぜい章ごとに変える……程度が無難な方法かもしれません。
以上、
http://novelgakuen.com/ninshou.html
より
by NO NAME (2013-09-15 21:17)