中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 静岡 > 9月21日の記事一覧 > 記事

ここから本文

【静岡】

学力テスト 上位86校の校長名公表

◆知事が方針転換

全国学力テストの成績上位校長名公表について記者会見する川勝知事=20日午後、静岡県庁で

写真

 静岡県の川勝平太知事が二〇一三年度全国学力テストで都道府県別の最下位になった小学六年国語Aの成績下位百校の校長名を公表すると発言した問題で、知事は二十日、方針を転換し、全国平均正答率以上の成績だった八十六校の公立小学校長名を五十音順で公表した。

 学力テストには県内五百七小学校が参加。国語Aの正答率は57・7%で全国平均を5ポイント下回り全国最下位だった。川勝知事は二十日午後、県庁で記者団に「学校教育の責任の所在を明確にする」と公表の理由を説明。下位から上位に公表の対象を変えたことには「17%、つまり五百七校のうち八十六校しか平均点以上を取っていない。ほとんどの学校が反省する必要がある」と指摘した。

 文部科学省の実施要領は学校別の平均正答率を公表しないよう求めている。川勝知事は「実施要領は学校名を出さないと明記しているが、校長名には触れていない。実施要領に矛盾しないという判断で公表した」と強調。「困っている先生がいれば申し出てほしい。助力は惜しまない」と述べた。

写真

 安倍徹県教育長は二十日朝、知事に成績データを提供。同日午後、記者団の取材に「校長名イコール学校名との認識は変わらない」としつつ「知事自らの責任で公表したこと。あとは文科省や県民一人一人が判断することだ」と述べた。

 県教委は二十四日に臨時会を開き、公表の経緯を教育委員に報告するとともに、今後の対応を協議する。

 県は二十日午後、「県民の皆様、特に先生方に」と題し、知事が校長名公表に至った経緯や校長名などを記した文章を県ホームページに掲載した。

◆「情報開示」理念を貫く

 【解説】上位校長名を公表した川勝平太知事は二十日、記者団に「下位でも上位でもよかった」と暗に公表ありきだったことを認めた。知事の公表へのこだわりは、その政治理念を抜きに語ることはできない。

 川勝知事は就任以来、根回しを嫌い、一貫して議論や情報の「透明性」を最重視してきた。初当選した二〇〇九年の知事選で県の情報公開度の向上などを訴え、六月の知事選でも「知事室のドアを開けたのは私だ」と自負した。

 だからこそ暴論にも聞こえた「下位百校を公表する」との発言は、情報開示に後ろ向きな県教委の問題点を明らかにするという政治姿勢を示したものと言える。直接の学力向上を意識してはいなかった。

 ただ、下位校の公表では懲罰的な色合いが濃くなり、テストに参加した児童への配慮を欠いた児童不在の騒動とも受け取られかねず、世論や教育現場の批判も予想される。それを回避したのは当然だろう。

 一方で、発言が教育界に一石を投じたのも事実だ。現場に危機感をもたらし、あらためて子どもの学力に対する県民の関心も集めた。そこに狙いがあったとみることもできる。

 県内小学校の学力テストの成績は〇七年以降、全国比で右肩下がりだ。結果を指導改善に生かした割合も、県は全国より十ポイント低いという文科省のアンケートもある。公表をめぐる論争を「空騒ぎ」で終わらせないためにも、学校や教委は地域や家庭と協力し、児童の学力向上策を真剣に考える時が来ている。

(唐沢裕亮)

【川勝知事の主張骨子】

◇公表は学校教育の責任は現場の先生にあることを明確にするため

◇校長は教師の授業力・指導力を上げる責任をもっているので氏名を公表する

◇氏名を公表しなかった校長のもと、うまく指導ができず困っている先生は、勇気をもって申し出てほしい。助力を惜しまない

 

この記事を印刷する

PR情報



おすすめサイト

ads by adingo




中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ