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【群馬】

越境通学 岐路 太田市高瀬町→栃木県足利市 市長が委託料打ち切り表明

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 太田市から、隣接する栃木県足利市への「越境通学」が転換期を迎えている。ほぼ半世紀にわたって足利市に支払ってきた「教育事務委託料」の打ち切りを、清水聖義市長が表明したためだ。太田市教育委員会は大きな判断を迫られている。 (美細津仁志)

 発端は、三日に開かれた太田市議会九月定例会の一般質問。清水市長は同市高瀬町から足利市の山辺小中学校への越境通学について、「太田の子どもは太田で育て、教育すべきだ。来年度はゼロにしたい」と述べ、二〇一四年度の教育事務委託料は予算付けしない考えを示した。

 越境通学は長年、市議会で議論されてきたが、地元ではデリケートな問題として、多くは語られてこなかった。だが「ズルズル行っても仕方がない」と、清水市長が大なたを振るった格好だ。

 市教委は、一四年度の方針を九日付で父母らに通知した。それによると、山辺中に通う生徒には部活動や受験などを考慮し、卒業までの通学を保証。一方、山辺小に通う児童には、一四年度から太田市側の毛里田(もりた)小か駒形小に転校してもらう方針だ。

 市教委は「まだ決定ではない」とし、二十四日の父母向け説明会で意見を集約する。いつ委託料を断つかを焦点に、十月中にも最終的な方向性を出す考えだ。

 足利市教委の担当者は「太田市からの委託がなければ、受託しようがない。それ以上はコメントできない」と話している。

◆本年度の児童・生徒 116人中48人通学

 太田と足利の両市が委託料に基づく越境通学の規約を結んだのは1964年。太田市高瀬町から約4キロ離れた毛里田小中学校が遠いため、約2キロ先の山辺小中に通えるようにした。85年には山辺小とほぼ等距離の太田市側に駒形小、87年にはその先に城東中がそれぞれ開校し、同町から通学できるようになっている。

 近年は、毛里田小と駒形小でスクールバスが運行され、太田市側に通学する割合が増えている。本年度は町内の児童、生徒計116人のうち、48人が山辺小中へ通う。足利市に支払う委託料は約587万円。

◆生活圏は、ほぼ足利

 越境通学が続いてきた高瀬町はどんな所なのか。「半群半栃」の町を見た。

 付近を車で走れば、両市境が複雑に入り組み、大河川などの明確な境は見当たらない。「隣の敷地は栃木」という家も。町から最寄りの駅と郵便局は足利市にある。コンビニ店には群馬、栃木両県の県紙(新聞)が並んで売られ、電話の市外局番は太田市の「0276」ではなく、足利市と同じ「0284」という。

 「生活圏はほぼ足利市です」と高瀬町区長の佐藤祥一郎さん(71)。山辺小で、足利市の副読本で地域学習を進める町内の子どもたちに、太田市で使う別の副読本を渡している。

 「どちらの市の歴史を学んでもいい」と寛容だが、市教委が示した一四年度の方針案には反対だ。「突然すぎる。友人や学習環境を変えてまで、途中で転校させる必要はあるのか」と首をかしげた。

 

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