社説:校長名公表 何のための学力調査か

毎日新聞 2013年09月22日 02時30分

 全国学力テストの結果をどう生かし、真の学力向上に結びつけるか。静岡県の「校長名公表」にまつわる混乱は、その「原点」を改めて考える契機にしたい。

 川勝平太県知事が異例の表明をしたのは9日。今年度全国学力・学習状況調査(学力テスト)で小学校国語Aが都道府県別正答率で最低だったことなどに危機感を持ち「下位100校の校長名」を公表するとした。

 これに対し、県教育委員会は「それは校名公表と同じで、文部科学省の実施要領に反する」と難色を示し、知事と対立した。

 結局、知事は対象を成績上位の校長名に転換し、全国平均以上の正答率だった小学校の校長86人の氏名を50音順で20日に公表した。知事は、実施要領は校長名の公表は禁じておらず、問題はないという立場だ。

 この理屈には無理があるだろう。校長名は学校を容易に特定させる。また、今春の異動で着任したばかりの校長の場合、4月実施のテストの成績に何の関係があるかという現場の反論もある。

 だが、そうしたことよりも、問題の本質は、このテストが始まった時から懸念されていた、順位に社会の関心が傾斜して、本来の目的が見失われつつあることではないか。

 テストは小学校6年生と中学校3年生を対象に国語と算数・数学で行われる。両教科はそれぞれ基礎的知識をみる「A」と、応用的な力をみる「B」に分かれる。静岡県が最下位だったのはその一つだが、差異は画然としたものではなく、全国平均と比べて5ポイント程度の開きだ。

 学力テストの目的は児童生徒の学力上の傾向と課題、平たく言えば得手不得手を見いだし、指導の工夫に生かすことにある。2007年度に始まった現行テストは毎回のように「知識問題に比べ応用が苦手」という傾向を示してきた。全員参加方式で毎年する必要はなく、間隔を置いた抽出調査で十分ではないか。全員参加方式だから学校別などの順位がつくという側面もある。

 もう、課題の把握から改善・解決にこそ力を注ぐ時だ。そうした観点で、具体的な成果を上げている学校の成功事例を取り入れるなど、学力テスト結果は多様な活用法がある。

 下村博文文科相は自治体がテスト結果の全面公表を決めた場合は認めることも念頭に、新たなルールづくりについて話し合いをしているという。しかし肝心なのは、どのような指導が不足していたか、伸ばせる得意分野は何か、など積極的な取り組みに直結させることだ。

 数字のみに大人が一喜一憂し、子供がその顔色をうかがうようなテストになっては元も子もない。

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