起業を考えている方と面白い話をしたのでメモ。
ソーシャル系サービスにおける「ニワトリと卵問題」
ソーシャルなウェブサービス、アプリって、「ニワトリと卵」の問題に囚われてしまいがちです。
たとえばFacebookのようなコミュニケーションサービスを考えてみます。Facebookは「すでに自分の友だちがたくさん登録している」という状況があってはじめて、存分に楽しむことができます。「まだだれも友だちが使っていない」という状況では、いくらFacebookを楽しもうと思っても、友だちができないので楽しみようがありません。
しかし、サービスをゼロから立ち上げる以上、「まだだれも友だちが使っていない」という状況は「必ず」発生してしまいます。ざっくり、最初の1万人くらいまでは、「友だちとのコミュニケーション」というユーザー体験を、十分に提供することができないでしょう。10万人、100万人と成長してきてはじめて、「友だちとのコミュニケーション」が機能するようになるのです。
「最初の1万人」をどう獲得し、どう利用を継続してもらうのか、これがソーシャル系サービスの立ち上げにおける困難なポイントのひとつです。
ツールとして提供する
nanapiのけんすうさんがイベントなどでお話をしていたそうですが、この「ニワトリと卵」を突破するため上では、「立ち上げ当初は単独で役に立つ『ツール』として提供する」ことが効果的です。
今をときめくクチコミSNSの「Retty」も、リリース当初は「おすすめのレストランをログに残そう」という「記録ツール」としての見せ方を強調していました。
クチコミ数、ユーザー数ともに増加した現段階では「実名のクチコミで美味しいお店に出会おう」という「発見」と「コミュニケーション」に寄せたキャッチコピーに「進化」しています。まさに、「当初は単独で役に立つ『ツール』として提供する」好例ですね。
写真アプリ「Snapeee」も、当初は単なる写真加工アプリでしたが、ユーザー数が伸びたあとにSNS化したサービスです。今はすっかりコミュニケーションアプリとして盛り上がっているので、見事な転身です。
もっと身近なところでいえば、LINEも「メッセンジャー」から「SNS」の機能(タイムライン機能)にジャンプした事例でしょうね。ぼくの周りではいまいちタイムラインは盛り上がっていませんが、若年層ではかなり使われているらしいです。
最近だとFacebookのチャットAPIを利用したコミュニケーションアプリ「DrawChat」が、この種の問題をうまく乗り越えている例だと感じました。すでに存在するソーシャルグラフをうまく用いれば、いきなりコミュニケーションの価値を提供できるわけです。
もちろん、こうしたジャンプをせずとも、いきなりCGM的、SNS的な価値を追及するアプローチも可能だと思います。「ツールとして提供する」というのは、あくまで成功確率を高めるアプローチのひとつ、という理解に留まるでしょう。参考になれば幸いです。