遅刻論②:その「迷惑」を、許せるか否か

2013/09/21


色々反響を頂いているので、別記事を起こしました。「遅刻するヤツは社会人失格だ」?そんな息苦しい常識、押しつけないでください


迷惑が掛からないならOK?

みなさんの意見をいただいてクリアになったのですが、ぼくは倫理的に潔癖なようで、「その遅刻によっていかなる迷惑が掛かろうが、それを許すというのが善い行為である」という立場を支持したいと考えています。

いくつかいただいた意見のなかで、「その遅刻によって誰も迷惑が掛かっていないのなら、叱責する必要はない」という、言ってみれば功利主義的な立場のものがありました。

例によって絡んでくるメカAGさんも、このような「迷惑」「被害」「損害」を観点にして、ぼくについて批判しています。

しかし会社員が遅刻について怒ったり怒られたりするのは、感情の問題ではない。後の打ち合わせの予定が詰まっている場合、相手が遅刻してきたら、打ち合わせ時間が減ってしまう。後の打ち合わせの開始時間をずらすわけにはいかない。

(中略)イケダハヤトは自分1人でしか仕事をしてないから、自分が我慢しさえすればいいと考えているのだろう。別に遅刻について怒ってる人間は、個人の感情で怒ってるわけではない。

続々々々々々々々・イケダハヤトはサラリーマンを馬鹿にしているか? : メカAG

もっと本質的にえぐってくるこちらの反論も、「損害」が切り口になっていますね。ワンツイートながら、これはすばらしい反論です。こういうフィードバックが欲しかったです。


いかなる迷惑が掛かろうが、それを許す

で、前段で申し上げた通り、ぼくはこうした「損害」「被害」の多寡を問わず、その行為を許すということが、大切だと考えるのです。

中田さんの質問に沿うのなら、もしも介護スタッフが遅刻し、それによって命が失われたとしても、その遺族がスタッフと会社を許すことができれば、それは本当に善いことだということです。


なんでこんな非現実的、潔癖主義的な態度を強調するかというと、こうした功利主義的な態度は、大袈裟にいえば、市民社会の堕落を招くとぼくは思うのですよ。この点については、下で引用した意見が、もっとも近い立場です(余談ですが、KomaTamaSent、大学の後輩です。元気にやってるかい?)。


「迷惑が掛からなければ、損害が小さければ」という「条件付き」の許しというのは、本当の意味で許しにならないと思うんです。それって全然許してないじゃないかと。それは単なる利得の交渉、違う言葉でいえば「商取引」です。

「許し」というのは、本質的に「損得勘定でみれば、どう考えても損をしているけれども、それでも、それでもですね、私はあなたを尊重し、関わりつづけます」という意思から発する行為です。損得勘定に囚われている時点で、それは許しじゃないのです。

メカAGさんが指摘する「相手が遅刻してきたら、打ち合わせ時間が減ってしまう。後の打ち合わせの開始時間をずらすわけにはいかない」なんてことは、本当にくだらない話なのですよ。そういった損害を「許す」ことが、市民の美徳だとぼくは思うのです。


書きながら気づいているのですが、ぼくはそういう実践困難で、非現実的で潔癖な美徳の価値を、問い直したいと考えているようです。ぼくらは「損得勘定を超えること」を忘れてしまいすぎです。子どもを育てることすら、損得感情が気になってしまう社会ですからね。


もう少し。ぼくの性善説的な態度には、違和感を覚える人もいるでしょう。実際、コメント欄では「遅刻を許すことが文化になったら、それに甘える人も出るだろう」という、これまた本質的な意見をいただきました。

ぼくはこの点に関しては、まず「だからこそ、市民の倫理観を磨いていくことが大切だ」と考えております。人々が善いことを善いと、悪いことは悪いと判断できない社会では、フリーライダーが登場し、不公平感は強まっていくでしょう。

…が、同時に、そういったフリーライダー(「遅刻したっていいじゃん!悪いことじゃないし」と、堂々と遅刻する輩)の存在すらも「許す」ことができるとしたら、それはハイレベルな成熟だとも考えます。

もっとも、フリーライダーによって社会全体が退廃しては元も子もないので、彼らを許しつつ、彼らの成熟に向けて努力する、という態度が求められるのでしょう。


と、遅刻することからはじめて、善悪の議論まで広げてみました。みなさんはどう考えますか?記事中で引用した二つのツイートが、よい問いを与えてくれると思いますので、思考材料としてぜひ。


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