【コラム】時代遅れの「青瓦台投資ショー」

 先月末に韓国大統領府(青瓦台)で朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と財界トップが開いた会合を振り返る必要がある。政府と財界のトップが経済を再生するために意気投合するのは明らかに意味あることだ。しかし、財界トップが大統領にまるで献上するかのように投資計画の大風呂敷を広げるイベントは再考すべき時が来た。

 権威主義の臭いが漂う形式も問題だが、それよりも実効性を伴わないからだ。朴大統領は商法改正と過剰な「経済民主化」立法に対する財界の懸念を払拭(ふっしょく)する真剣なメッセージを伝えた。これに対し、財界トップが与えられた3分間のスピーチ時間を直面する課題の解決に充てたのは当然だった。その姿を見て「財界トップはやはり優れた商売人なのだな」と感じた。

 しかし、会合の意味は財界トップがこれまでと同様、投資の大風呂敷を広げたことで半減した。30大企業グループは年初の計画を4%上回る155兆ウォン(約14兆2000億円)を投資すると表明した。しかし、30大企業グループによる今年上半期の投資実績は年初計画の41.5%にすぎない。にもかかわらず、投資計画を6兆ウォン(約5500億円)上積みし、残る4カ月に毎月23兆ウォン(約2兆1000億円)をつぎ込むと表明したことになる。

 青瓦台での会合のわずか1カ月余り前、財界は全く違うことを言っていた。全国経済人連合会(全経連)が7月初めに30大企業グループを対象に行った調査では、年初時点の計画より投資を拡大すると答えたのは1社だけだった。6社はむしろ投資を減らすと答えていた。企業は長期的な視野で細かく計算機をたたいて投資を行う。そんな企業が外部環境に特に変化がない1カ月の間に立場を変え、争うように投資意向を表明しているのだから、そんな約束は「空手形」だと見るべきではなかろうか。

 財界は過去にも大統領の前で空手形を乱発した。李明博(イ・ミョンバク)政権1年目の2008年4月、30大企業グループは、前年を23%上回る92兆8000億ウォン(約8兆5000億円)を投資すると約束した。当時マスコミは「財界が大統領と会い、予想よりも大きな風呂敷を広げた」と報じた。しかし、全経連が翌年発表した資料によれば、実際の投資額はそれを11兆ウォン(約1兆円)も下回った。

 大企業は政権初期にはたとえ虚勢であっても大規模投資を約束するが、政権後期には率直に内心をあらわにする。金大棋(キム・デギ)元大統領府経済首席秘書官は昨年5月、5大企業グループの代表と会い「経済が困難な時期なので、投資をもう少し増やすことはできないか」と打診した。しかし、財界トップらは「困難な状況だ」として拒否。30大企業グループによる投資実行額は年初計画を約13兆ウォン(約1兆2000億円)下回った。

 企業の投資はビジネスの本能に従うのみだ。カネになると判断すれば、社会主義国家にも工場を建てるのが商売人だ。大統領府と政府が真剣に企業の投資を引き出したければ、投資の障害を直接取り除いてやればよい。権力を持ち過ぎた労働組合が主導する高賃金、硬直した雇用条件を解決し、規制緩和に取り組めば、企業の海外脱出は減るはずであり、外国企業が韓国に投資するようになるはずだ。大企業が最高級ホテルを建設したいと表明しているにもかかわらず、学校の「半径規制」(学校周辺に観光ホテルの建設を禁じる規制)がネックとなり、身動きが取れないといった障害を解消すれば、すぐに数千億ウォンの投資を誘発できるはずだ。時代遅れの「青瓦台投資ショー」はそろそろ幕を下ろすべきだ。

朴宗世(パク・チョンセ)経済部長
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