菅長官VS宮内庁、バトルは続く
「皇室政治利用」議論の決着は?
東京五輪決定の大きな要因となった高円宮妃久子さまのIOC総会出席をめぐり官邸と宮内庁の対立が続いている。
宮内庁担当記者が話す。
「発端は、招致成功をアベノミクスの『第4の矢』としたい安倍晋三首相の強い意向を受けた官邸サイドが、宮内庁に久子さまの総会出席を強引に迫ったことにあります。最終的に出席を受け入れたことについて、宮内庁の風岡典之長官は9月2日の記者会見で招致活動を政治的な活動とする立場から『苦渋の決断』だったとした上で、『天皇、皇后両陛下も案じられていると推察した』と述べたのです」
これに対して菅義偉官房長官は翌3日の定例会見で、
「皇室の政治利用、官邸からの圧力であるという批判は当たらない」
「宮内庁長官の立場で、両陛下の思いを推測して言及したことについて、私は非常に違和感を感じている」
と風岡長官を批判した。
この背景には、政権のイメージアップ戦略を担う菅長官が“官邸の圧力”という悪いイメージを嫌ったと同時に、
「政府の一員である宮内庁長官が、政府の司令塔である官邸批判を公然と行ったことに、政権の舵取り役として飛ぶ鳥を落とす勢いの菅長官が、カチンときた」(政府関係者)
との側面があるという。
バトルは五輪開催決定後も続いており、風岡長官は12日の記者会見で「皇室の活動の在り方について、もう1回考える必要がある」と苦言。
再び癇に障った菅長官は、翌13日にすぐさま反論。
「宮内庁には『開かれた皇室を実現する』という観点からも、内部でしっかり考え方を整理してほしい。その結果は、しっかりと報告を受けたい」
この対立のベースには、五輪開催に沸く世間とは違う、宮内庁の常識がある。
宮内庁関係者が指摘する。
「1980年のモスクワ五輪ボイコットなど、五輪に政治的側面があるのは明白。総会出席はまさに政治利用です。天皇や皇族の政治的発言が許されない現行憲法下で宮内庁長官が両陛下のお考えを『推察』するときは、両陛下のご意向が働いているのは常識。菅長官は権力の中枢で舞い上がっているのでは」
安倍政権は保守本流を標榜する割に皇室には無理解というのが、宮内庁では常識となりつつあるという。
※この記事の公開期間は、2016年09月17日までです。