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【あの人は今こうしている】

「私はこれで会社を辞めました」…禁煙パイポCMのあの人は今

【芸能】

楽天SocialNewsに投稿!
2013年9月20日 掲載

「あんなに顔が大写しになるとは思ってなかったし、静岡地区だけで放映されると聞いていたんで」


当時は子供もマネした/(C)日刊ゲンダイ
 星の数ほど流されるテレビCM。大半が見た直後に忘れてしまうシロモノだが、中にはいつまでも記憶に残るCMもある。84年から放映されたアルマン(現・マルマン)の禁煙パイポのCMもそうした一本だ。見るからにマジメそうな中年男性が小指を立て、「私はこれで会社を辞めました……」とやった。このインパクトは強烈で、「アイツは誰だ?」と大いに話題になった。その主は手塚和重さん(73)。近況は――?


「禁煙パイポのCMには3人の中年男が出てたでしょう。向かって左端の方はCM放映から数年して亡くなり、真ん中の方はどこでどうされてるかわかりません。そこで私がいつも1人で取材を受けております。きょうは、はるばる埼玉のある町から出かけてきました」

 日焼けした肌に赤、黄、白の派手なアロハが似合っている手塚さん、まずはこう言った。会ったのはJR秋葉原駅から3分のマルマン本社。

「地方公務員を60歳で定年退職後、8年前から地元のシルバー人材センターで庭師をやっております。公務員といっても事務仕事じゃなく、公園や霊園で樹木の管理をやってたんで、現役時代の知識や技術を生かせる庭師になりました。庭師ってのは仕事のときは黒ずくめ。だから、仕事以外では色味があるものを着たくなるんですなあ」

 CMに出たときは公務員だったのか。
「44歳でした。30代の頃からエキストラ協会ってところに登録し、CMや映画にちょろっと出てたんです。若い時分から映画や演劇が好きだったから、エキストラでもやれば、そういう世界も垣間見られて面白いんじゃないかと思いましてね。禁煙パイポはCMオーディションがあって、日本橋のプロダクションに背広にネクタイ姿で行きました。同年配の男性が60から70人ほどいたかなあ。その後、1カ月くらいしたら、合格しました、って封書が届きました」

 ここで疑問がひとつ。公務員がCMに出て大丈夫だったのか?
「兼業許可を取ればオーケーでした。ただ、私は許可願を出してなかった。あんなに顔が大写しになるとは思ってなかったし、静岡地区だけで放映されると聞いてたんで。それが評判良くて、3カ月後には東京でも始まった。すぐに私だとバレ、上司の建設局公園緑地部の課長に呼ばれ、“コレ(金)もらったのか?”って聞かれましたよ。もらっとったら、クビでしたね」

 ってことは、ノーギャラ?
「ハイ。交通費8000円とお弁当が出ただけ。同僚には“1000万円くらいもらったんだろう”とか、ずいぶんやっかまれました、ハハハ」

 CMの爆発的人気のおかげでアルマンの年商は7億円から40億円に跳ね上がった。
「森永製菓の宣伝部から“江川卓とチョコレートのCMで共演しませんか?”って誘いもありました。でも、お断りした。公務員として細く、長く、堅く、がいいと思ったんです。あのCMに出て、禁煙する人の先駆けになれたって誇りだけで十分です」

 かくして、人気だけ享受した。
「街を歩けば、サインをしてくれ、写真を一緒に撮ってくれって頼まれました。今も庭師の仕事の合間、昔、こんなCMに出てたんだと話をすると盛り上がり、それがきっかけで新しいお客さんを紹介していただくこともあります」

 9歳年下の夫人と2人暮らし。長女は産経新聞記者と結婚し、息子が1人。次女はサラリーマンと結婚、3歳の娘がいる。
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