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  零~真紅の蝶~ 作者:しいな
零~真紅の蝶~
この村では毎年、ある儀式が行われている。
…それは「生け贄」である。
その儀式は村のために双子を捧げなければならない…。

僕は双子だ。

この村は、現在の決まりとは違った。「双子について」だ。
現在の決まりは先に生まれた方が兄・姉である。
だが、この村は昔のようにする決まりである。つまり先に生まれた方が弟・妹とし、後に生まれた方が兄・姉にあたる。

この村での双子の兄・姉は弟・妹をこの手で殺さなければならない…
僕は兄だ。
どうやってもこの道は通らなければいけない…

殺したならば、弟・妹は蝶にならなきゃいけない。

―だけど…ならなかった―

ひどく…とてつもなく…後悔している。

僕はひどいやつだ。
あのときあんな想いをしなければ…。

…でも、僕には無理だった。想いを消すことを…

僕があんなことを想っていなければ、蝶となりてあの人は幸せだっただろうか。
他の人にも僕と同じ想いをしてほしくはない。

次はあの子たちになるはずだ。
八重(やえ)佐重(さえ)を逃してあげなければ-

「絶対に振り返ったらだめだ。」
八重と佐重をこの村から、出してあげた。
無事に逃げ切っているだろうか。逃げ切ってほしい。そう祈りつづけた。

翌日、「村人はあの子逹がいない」と大騒ぎだった。
僕が逃がしたとは誰も思っていないだろう。
だけど、誰か見ていたのか、いつの間にか僕が疑われてた。
「何もしていない」
と言えばよけいに疑われた。

…やっぱり本当のことをいった方がよさそうだ。
本当のことをいった。
もちろん牢の中に入れられた…

…ただ、絶対に言わなかったことが一つ。
「逃がした場所」
は死んでもいわないことにした。

そういえば僕の名前を名乗ってなかったね。
僕の名前は立花(たちばな) 樹月(いつき)
弟の名前は立花(たちばな) 睦月(むつき)である。
そして僕たちには妹がいる。妹は双子ではなく、普通の妹だ。
名前は立花(たちばな) 千歳(ちとせ)だ。
とても臆病な性格ゆえに押し入れに籠って泣いていることが多い。
生まれつき弱視のため、離れていてもすぐに見つけれるように鈴をあげた。

話がそれたから話を戻す。

そして村人が八重たちを探しに行った。
結局、八重たちは見つかってしまった。僕が逃がした日は儀式の日だ。そして僕が儀式に失敗してしまったから至急、別の双子がやる。
八重と佐重が行くことになった。
だが、まだ佐重しか見つかってないみたいだ。
僕は牢の中だから様子がわからない…
まだ、八重も見つかってなうようだ。

だけど、結局僕は逃がしてあげれなかった…佐重が見つかってしまった。
すべて僕の責任なんだ。
睦月だって救えなかった。
もう…止めれない。八重が見つかれば、
ただ…蝶になってくれることを祈っているしかできない。
僕はあることを考えた。


―自殺―


そうすればもう何もかもが苦しまなくても…いい。
僕は輪になるように縄を結んだ。
そして首に…通す…

―八重、どうか見つからないで―

~八重視点~
樹月君が村から出してくれた。
「佐重!早く早く!」
「待って!お願い!お姉ちゃん!置いて行かないで!」
佐重は足を滑らせた。崖から落ちた。
「きゃあぁぁー!」

「…さ……え…?」


私は必死に逃げた。
足がもつれながらも。

火が見えた。村人だった。きっと私達を探している。木に隠れながら見守っている。

すると佐重を運んでいた。
どう…しよう…
私のせいで…佐重が…村に連れ戻される…!
しばらく、その状態でいた。
「そろそろ村に戻ってみよう。佐重を探さなきゃ。」

~佐重視点~
目を覚ますと今までいた場所とは違う場所にいた。一瞬で分かった。ここは村の中だということを。
村人が目をさましたのに気がついた。
「八重はどこだ。」
「分からない …」
私は分からないとしか言えなかった。
(きっと八重は戻って来る)
私はそう祈った。

~八重視点~
村についた。
村人たちがそこらへんにうろうろしている。
そうだ!樹月君はどうしてるんだろう!
私は村人の目を盗んで駆け足で探した。

なかなか樹月君見つからない…
もしかしたら…牢の中に入れられた…とか!?

私はそこに向かった。
だけど鍵がかかっている。
鍵をさがさなきゃ。

そして必死に探して、見つかった。
重たい扉をおもいっきり開いた。

「………!!」

言葉を失った。
そこには…
首を吊った状態の樹月君がいたからだ。


「うっ…ぐすっ…どうして…」

村人がいつの間にか背後にいた。
腕をひかれ、どんどん樹月君から離れていく。

そして儀式をするところに連れて行かれた。

そこには佐重がいた。
儀式を始めた。


-天に登りし巫女は蝶となりて天に登る-

-兄・姉は弟・妹を殺さなければならない-

-どうして愛する家族を殺さなければいけないの?-

-今まで一緒にいた家族を殺すの…?-

-嫌なのに勝手に手が動く!嫌だ!嫌だ!止めて!-

-首に手をかけゆっくりと…手に力を強めていく-

佐重はゆっくり目を閉じていった。

-この手で殺してしまった…-


-愛する家族を殺してしまった…-


儀式は失敗した
赤い蝶となりて天に登ることは…
…なかった

村が闇に包まれていった。


-「ごめんなさい」-
-「ごめんなさい」-


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