上條
「ずらっと並んでいるのは、衣類の柔軟剤です。
柔軟剤は本来、衣類の洗い上がりを柔らかくするためのものなんですが、最近の人気の理由は、“香り”。
衣類に香りをつけるために使う人が増えているんです。」
阿部
「ずいぶんと、最近は種類が増えましたよね。」
上條
「ここにあるだけでも、約20種類。
ところが今、この香り付きの柔軟剤をめぐって、国民生活センターが異例とも言える呼びかけを行っています。
いったい、どうなっているのでしょうか。
まずは、ブームの背景をご覧ください。」
上條
「ずらっと並んでいるのは、衣類の柔軟剤です。
柔軟剤は本来、衣類の洗い上がりを柔らかくするためのものなんですが、最近の人気の理由は、“香り”。
衣類に香りをつけるために使う人が増えているんです。」
阿部
「ずいぶんと、最近は種類が増えましたよね。」
上條
「ここにあるだけでも、約20種類。
ところが今、この香り付きの柔軟剤をめぐって、国民生活センターが異例とも言える呼びかけを行っています。
いったい、どうなっているのでしょうか。
まずは、ブームの背景をご覧ください。」
香り付きの柔軟剤、幅広い層に人気です。
女性
「絶対、柔軟剤入れます。
においが好き。」
男性
「僕は、アメリカからわざわざ輸入したのを使っているので、いつも良いにおいだね、って言われたりします。」
ドラッグストアでは…。
藤谷記者
「香り付きの柔軟剤は、お店のいちばん目立つ場所に、このように置かれています。
さらに、こちらの棚にも、そして、さらに、こちらの棚すべてが香り付き柔軟剤や、その関連商品です。」
この店で扱う柔軟剤や柔軟剤入りの洗剤は、合わせて45種類。
どれも、香りの良さをアピールしています。
ドラッグストア店長
「洗剤と同じくらい、売れている。
補充が追いつかない状態になっております。」
柔軟剤の市場は、毎年2、3%の成長を続け、去年(2012年)は、およそ650億円に達しています。
香り付きの柔軟剤が暮らしに欠かせない、という人もいます。
都内の主婦、小野順子さんです。
小野順子さん
「夫も、ワイシャツがいい香りだったりすると、同僚の女性にほめられたりするらしいんですね。
いい奥さんがそばにいる、っていうアピールにもなります。」
これまでに試した柔軟剤は、20種類以上。
気分によって使い分け、複数をブレンドすることもあります。
6人家族で、毎日2回、洗濯をする小野さんにとって、柔軟剤の香りは、ささやかな癒やしです。
小野順子さん
「毎日、同じことの繰り返しなので、主婦は。
香りが変わるだけでも、気分転換で、毎日のつまらない洗濯が楽しくなります。」
小野順子さん
「とっても香っております。
いい香りです。」
消費者の動向に詳しい専門家は、香りに対する意識の変化がブームの背景にある、と分析しています。
博報堂生活総合研究所 酒井祟匡主任研究員
「2000年代(のブーム)は匂いを消す、あるいは抗菌することだった。
(最近は)香りを抑えて、嫌なイメージを付けないということではなく、自分の香りを表に出して個性を付けようとか、今まで香水を買わなかった層も、自分で洗濯をする時に、部屋の中を良い香りにしたいというニーズが出てきている。」
上條
「やはり、好きな香りに包まれるというのは、癒やしにもなるんですかね。」
阿部
「取材にあたった、藤谷記者です。
この香る柔軟剤に対して、注意が呼びかけられたということですね?」
藤谷記者
「実は今、『柔軟剤の香りをかいで気分が悪くなった」など、体調悪化を訴えるケースが相次いでいるんです。」
昨日(19日)、国民生活センターが開いた会見です。
「柔軟剤のにおいについては、においの強さの感じ方には個人差がある。
使用量が過度にならないよう、配慮する必要性がある。」
消費者に、柔軟剤の過度な使用を控えるよう呼びかけました。
最近、全国の消費生活センターには、柔軟剤の香りをかいで「気分が悪くなった」、「頭痛がした」などという相談が急増しています。
件数は、5年前の5倍近くに上ります。
さらに、柔軟剤の香りが生活に深刻な影響を与えているケースもあります。
この女性は、3年ほど前から、隣の家が使う柔軟剤の香りが気になり始めました。
女性
「とにかく気持ちが悪くなります。
もっとひどくなると、吐き気がしますし、隣で(柔軟剤の)濃度の高い洗濯物を干されれば、のども痛くなりますし、ずっと不快な感じがします。」
女性は、窓を常に閉めきり、脱臭機を使うなど、不自由な生活を強いられています。
香りがきついときは、実家や公園に避難してきましたが、最近は、外でも柔軟剤の香りに悩まされることが増えています。
女性
「どこに行っても、(柔軟剤を)使っている人がいれば、その空間全部が、私にとっては臭いので、絶望的な気持ちになります。」
柔軟剤による被害を訴える患者を多く診てきた医師は、この女性のように、深刻な症状も珍しくないといいます。
そよ風クリニック 宮田幹夫院長
「筋肉痛、関節痛など、いろんな症状が出ています。
日常生活でも、職場でも(周囲の)皆さんと、つきあいが無くなる人が結構出ています。」
国民生活センターでは、柔軟剤メーカーに対して、利用者が過度な使用を控えるよう、啓発活動を行うことを要望しています。
国民生活センター 原田慶主事
「本人にとって、快適なにおいだということで選んだ柔軟剤でも、他人にとっては不快になることがありますので、配慮をしていただきたいと思っています。」
上條
「たかが香りといっても、ずいぶん、困る人、症状が深刻な人もいるんですね。」
藤谷記者
「もともと香りを良いと感じるか、悪いと感じるかは、嗅ぐ人の感受性によって変わるとみられています。
これは柔軟剤についても同じで、良い気分になるか、逆に悪い気分になるかは、嗅ぐ人の感受性によって左右されるとみられているんですけれども、さらに取材を進めてみますと、単なる好き嫌いでは済まされない深刻なケースもあることが分かってきました。
専門家の話をお聞きください。」
東海大学医学部 坂部貢教授
「においの成分を化学物質だと仮定した場合、お酒に対して非常に強い人と、ちょっと飲むと、真っ赤になる人がいるのと同じで、化学物質に対する人間の感受性は、ものすごく個人差がある。
化学物質・化合物に対して、アレルギーに似た反応を起こす方がいる。」
阿部
「こうしたことを受けて、昨日、国民生活センターは、注意を呼びかけたわけですね。」
藤谷記者
「今回、国民生活センターは、柔軟剤の利用者だけでなく、製造メーカーにも要請を行いました。
商品を購入した人が適正量を超えて使用しないよう、商品のパッケージに表示をするとともに、利用者に対する啓発活動も行うように求めています。
業界団体の調査によりますと、柔軟剤の利用者の4人に1人までが、定められた量の2倍以上を使っているという結果も出ています。
周りの人によかれと思ってつけた衣服の香りで、周りの人を不快にさせたりですとか、さらには、深刻な症状を引き起こさせたりすることもあるわけですから、節度ある利用を心がけたいと感じました。」