水害危険、福知山市が説明せず 台風で浸水の分譲地
台風18号による大雨で由良川が氾濫し、全132戸が浸水して孤立した福知山市戸田地区で、造成地を宅地分譲する際、市が購入者に対し、近くの由良川の堤防が未完成のため水害の危険性があることを説明していなかったことが20日、分かった。販売促進を優先したためで、浸水被害を受けた住民らは「危険性を知らされていれば購入を考え直した」と憤り、市は「早く完売させたかった。大変申し訳ない」としている。
戸田地区の堤防整備(2・4キロメートル)は、国交省が2002年に着工。この際、整備予定地に住んでいた70世帯の集団移転先として、市は約100メートル南の農地(6・2ヘクタール)を買い取り、宅地造成した。
住民の移転後、市は08年から、余った造成地22区画を分譲(1坪平均9万1740円)し、11年までに14区画を売却。市内外の購入者が家を建てて引っ越してきたが、一方で堤防整備は用地買収が進まず、4カ所(計560メートル)が未完成のままになっていた。
今回の戸田地区への浸水は、同省福知山河川国道事務所によると、堤防の未完成部分などから水位を増した川水が氾濫し、被害を広げたとみられる。
このため、分譲地を購入し、新築の自宅が被害を受けた会社員男性(28)は「市にだまされた」と憤る。分譲地の購入を考えていた時、市の担当者から「堤防ができている」と聞き、市が分譲する安心感もあって購入した。男性は「確かに堤防はあるが、未完成の箇所があるという話は一切聞かされていなかった」と言う。綾部市から移住した主婦(37)も自宅が床上浸水し、「水害の危険性があるなら、せめて住宅の基礎を上げるべきなどと説明してほしかった」と話す。
分譲地は現在も8区画が売れ残っており、担当する市農林管理課は「増水すれば水が入る危険性があることを、しっかり伝えるべきだった。浸水被害を受けた方々に申し訳ない」としている。
【 2013年09月21日 09時30分 】