きのう未明、福島第一原発のある福島県浜通りを震源に、最大震度5強の地震があった。約1千基もある放射能汚染水の貯蔵タンクは無事だったが、ひやりとした人も多かったのではない[記事全文]
なぜ、このタイミングなのか。理解も賛同も得られない辞任劇である。プロ野球シーズンが大詰めを迎えたなか、加藤良三コミッショナーが来年6月までの任期を残して退くことを表明し[記事全文]
きのう未明、福島第一原発のある福島県浜通りを震源に、最大震度5強の地震があった。
約1千基もある放射能汚染水の貯蔵タンクは無事だったが、ひやりとした人も多かったのではないか。
前日、現地を視察した安倍首相は汚染水の影響について、一定範囲内で「完全にブロックされている」と繰り返した。
だが、こうした認識は甘いと言わざるを得ない。重い危機感をもって、汚染水の大量流出といった不測の事態の防止に全力を挙げるべきである。
象徴的なのは、「状況はコントロールされている」と言い切った安倍首相の言葉だ。
五輪の招致演説で世界に発信されたが、直後に東京電力幹部の一人が、事態は制御されていないと否定した。
今週開かれた国際原子力機関(IAEA)総会では、中国が現状に強い懸念を示すなど、疑問の声が相次いだ。出席した山本科学技術担当相も公式な演説では「コントロールされている」との表現は封印した。
言葉じりにこだわっているのではない。
「コントロールする」「完全にブロックする」という目標と、「コントロールされている」「完全にブロックされている」という現状認識との混同を危惧しているのである。
どれほどの汚染水が地下のどこを通って海に出ているのか。推定しかできない現状は「コントロール」にはほど遠い。
首相の言葉は重い。甘い現状認識が発信されると、対処の手がゆるみかねない。
反省材料が野田民主党政権の時代にある。2年前の12月の「事故収束宣言」である。
核燃料が溶けた炉心に連続的に水を注ぐ当面の応急措置ができたに過ぎないのに、仰々しく区切りを宣言してみせた。
その結果、汚染水の問題は政治の論議や多くの一般市民の関心から遠くなった。メディアも問題の深刻さを十分伝えきれなかったことは反省点だ。
IAEA総会では「汚染水がたまる問題は当初からあった。なぜ2年間も解決策が探られてこなかったのか」と、もっともな指摘があった。
英科学誌ネイチャーは「日本政府の従来の行動や情報公開の姿勢からすると、東電に代わって前面に出ても変わりないかも知れない」と厳しい論調を示している。
現状は楽観を許さない。安倍政権は、危機感と情報を内外で共有し、世界の知見と支援を結集する努力が求められている。
なぜ、このタイミングなのか。理解も賛同も得られない辞任劇である。
プロ野球シーズンが大詰めを迎えたなか、加藤良三コミッショナーが来年6月までの任期を残して退くことを表明した。
統一球をめぐる問題が発覚したのは6月のことだ。昨年までのボールから、飛びやすいように仕様を変えながら、選手にもファンにも隠していた。
加藤氏は「変更は知らなかった」「不祥事ではない」と責任逃れに終始。その後、選手会から異例の「不信任」を突きつけられたが、居座っていた。
27日には、統一球の問題を調査している第三者委員会の結論が出る。コミッショナーの責任を追及する厳しい内容が予想され、引責辞任に追い込まれる前に逃げたと非難されてもしかたあるまい。
遅きに失した上に、立つ鳥跡を濁すような引き際である。
加藤氏をコミッショナーに迎え入れたオーナー会議も、この間の混乱の責任を問われるべきだろう。
そのオーナー会議は早速、コミッショナーの選び方や決め方について話し合ったという。だが、その前にコミッショナーの位置づけや役割を見直すべきではないか。
野球協約は、オーナー会議を「最高の合議・議決機関」と定めている。コミッショナーの「指令、裁定、採決及び制裁は最終決定」としながら、オーナー会議などでの決定を「執行する機関」と位置づけている。
これまで12代のコミッショナーは、いずれも球界の外から招かれてきた。なかには志をもって球界の刷新に取り組もうとしたひともいたが、オーナーに煙たがられて成果を上げられないこともあった。
名誉職のお飾りにすぎないなら、高額の報酬を払って置いておく意味はない。
その選任についても、協約に「任免はオーナー会議が行う」とあるだけで、具体的な選考方法などの規定はなく、不透明さが指摘されてきた。
13代目を選ぶにあたり、コミッショナーに求める資質や権限について話し合い、選び方を透明にし、そのために協約を改めることも必要だ。
厳しい経済環境のもと、球界全体の利害などをめぐって12球団の間で意見が対立し、調整が必要な場面が増えた。
そんなとき、公正な立場で指導力を発揮し、オーナー会議に遠慮なくもの申す。こういうコミッショナーがいれば、プロ野球はもっと活気づく。