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【社会】

基準地価 韓流の街 新宿区百人町 下落

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 国土交通省が十九日に発表した基準地価で、東京都全域の傾向と異なって昨年急上昇し、今年下落したのが、韓国人や中国人らが多く生活するJR新大久保駅近くの新宿区百人町だ。日韓・日中関係が冷え込み、韓流(はんりゅう)ブームは衰退。さらに原発事故の影響も受け、街の活気に陰りもみられる。 (杉戸祐子)

 百人町の基準地価の対前年変動率は昨年はプラス3・8%、今年はマイナス0・6%。都全域の動向と異なっている=グラフ。

 「客は一年で半分に減った」。JR新大久保駅近くの韓国雑貨店で化粧品を担当する男性(46)は明かす。百人町のうち、新大久保駅の東側はコリアタウン。目抜き通りの大久保通り沿いに韓国料理店や雑貨店が軒を連ねる。

 二〇〇三年にドラマ「冬のソナタ」で韓流ブームに火がつき、東方神起やKARAなどのKポップが流行して隆盛を極めた。「女性客で店内が毎日ぎゅう詰めだった」。歩道からあふれた客が車道を歩くほどのにぎわいだったが「最近はテレビにも取り上げられず、売り上げも落ちた」。

 百人町で不動産業を営む奥山高弘さん(47)は「一年前までは韓国人がブームに乗って飲食業を始め、バブルみたいだった」。通り沿いのビル一階の物件は「坪五万円の高値でも借り手がつくほどだった」。

 ところが「竹島問題で流れが変わった」と奥山さん。昨年八月に韓国の李明博(イミョンバク)大統領(当時)が、領有権をめぐって日本と対立する島根県の竹島を訪問し、日韓関係が緊迫した。今年二月以降は、街が反韓デモのヘイトスピーチ(憎悪発言)の現場ともなり「商売をするのを怖がる人もいる。店を出す人が減った」。

 一方、新大久保駅西側は中国人の居住者も多かったが、「家賃を下げ、礼金・敷金をゼロにしても入居者が来ない」と、不動産業者の白砂(しらまさ)晴男さん(72)は話す。一一年の東京電力福島第一原発事故以降「放射能を恐れて中国人留学生が減った」。

 尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化もあり、「アパートは空室だらけ。店舗も空きが出ている」。中国系不動産業者は「中国人向けの旅行業者が撤退している」と実情を話す。

 どう活路を見いだすのか。百人町の近くで日本とコリアを結ぶ活動を行うNPO法人「高麗博物館」の山田貞夫理事長(75)は「ブームで解決する問題ではない。市民が植民地支配などの歴史を学び、新しい関係をつくる必要性が増した」と語る。

 

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