「核のゴミ」回収可能な案示す9月20日 18時18分
原子力発電所から出るいわゆる“核のゴミ”を地下深くに埋めて処分する計画を見直している経済産業省は、地下に処分する計画は維持したうえで、今の計画とは異なる、埋めたあとでも回収ができる形で処分する案を、専門家の会議で示しました。
原発から出るいわゆる“核のゴミ”高レベル放射性廃棄物は、地下300メートルより深い安定した地層に埋める計画ですが、国が13年前に始めた公募による処分場の候補地探しが全く進まず、経済産業省は、ことし5月から抜本的な計画の見直しに向けた議論を進めています。
経済産業省は20日の専門家が参加した会議で、地下に処分する計画は維持したうえで、今の計画とは異なる埋めたあとでも回収ができる形で処分する案を示しました。
具体的には、いったん埋めたあとでも、将来、処分方法の安全性に問題があった場合や、毒性を下げる技術が開発された場合に、地下から回収できるようにするとしています。
“核のゴミ”を巡っては、国民の安全性への懸念が根強く、日本学術会議が去年、地震や火山が活発な日本で長期に安定した地層を確認することは難しいと指摘し、経済産業省は地下から回収できるようにすることで国民の理解を得たい考えです。
会議に参加した専門家からは「国民は国や専門家への信頼がない」「国が一方的に決めずに国民が参加した議論の場が必要だ」といった意見が出ました。
経済産業省は、新たな案の検討を期限を決めずに進めるとしています。
専門家の会議の増田寛也委員長は「きょうは国民の間に不信感があることが問題とされたので、今後詳しく議論したい。国民が参加する仕組みを考える必要はあるが、最後は政治レベルで決めざるをえないと思う」と話しました。
核のゴミ 現状とこれまでの経緯
原発の運転に伴って発生する放射能レベルの極めて高い、いわゆる“核のゴミ”高レベル放射性廃棄物は、原発で使い終わった使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムなどを取り出したあとに残る廃液をガラスで固めたものです。
固めた直後は、人が近づくと10数秒で致死量に達するレベルの極めて強い放射線が出るほか、影響が抑えられるまでに数万年かかることから、その処分が課題となっています。
国は平成12年に法律を作り、地下300メートルより深い地層に埋めて最終的に処分する計画を打ち出し、全国の自治体から候補地を募りました。
しかし、これまでに応募したのは平成19年の高知県の東洋町だけで、その東洋町も住民の反対などによってすぐに応募は撤回され、その後、具体的な動きはありません。
核のゴミは、青森県六ヶ所村の施設に合わせて1700本余りが一時的に保管されているほか、全国の原発などには、およそ2万5000本分に相当する使用済みの核燃料がたまっています。
一方で、核のゴミの処分は日本と同様に原発を利用する世界各国でも大きな課題になっていて、現在、原発を利用している31の国と地域のうち、処分場の建設場所が決まっているのはフィンランドとスウェーデンの2か国だけです。
このほか、フランスでは事実上の処分地を選んでいますが、イギリスでは処分場の誘致に関心を示していた自治体が5年間の議論の末にことし1月に撤退したほか、アメリカでも自治体の反対で計画がストップし、ことし1月に35年後の処分開始を目指した新たな計画が公表されたばかりです。
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