京都ルートの逆転模索 リニア誘致、オール関西目指す
JR東海が18日、リニア中央新幹線の計画概要を発表し、東京-名古屋間のルートが明らかになった。残る名古屋-大阪間について、京都府と京都市、京都経済界は京都駅誘致に動いているが、奈良市付近を通ることが国の計画で決まっている。いったん決定した計画を覆す難題をクリアするには、関西全体を巻き込む手腕が問われる。
最高時速505キロのリニアは東京-大阪間を1時間余りで結ぶ。1973年の基本計画、2011年の整備計画では、名古屋以西の経由地は「奈良市付近」と明記された。
大都市圏を結ぶリニアのルートから外れれば、京都の地位低下は免れない。経済的打撃も計り知れず、京都商工会議所の岩井一路観光・運輸部会長は「このままでは東京や名古屋にあらゆるものが流れてしまう」と危機感を訴える。
府、市、京都経済界は22年間休眠状態だったリニア誘致の協議会を昨年9月に再開。また府は府内2ルートと奈良ルートを比較し、京都駅ルートの経済効果が高いとの独自試算を公表するなど巻き返しに躍起だが、国土交通省によると、過去に整備計画を変更した例はない。
JR東海は計画変更を一貫して否定しており、山田佳臣社長は7月の会見で京都ルートについて「ああそうですか、と言うことしかない」と突き放した。
JR東海は建設費9兆円を全額負担するため、東京-名古屋間を2027年に先行開業させ、名古屋-大阪間は45年と2段階で開業する方針だ。だが、府や市は最近、「東京-大阪間を同時に開業すべき」との主張を強めている。
理由について、府や市の関係者は「東京-大阪間が結ばれてこそリニアの効果が最大限発揮される」とした上で、「同時開業になれば国が財政支援する可能性がある。資金を出すことで国の関与が今より強まれば、政治的な動き次第でルート変更につながる道も開ける」と政治決着での逆転に期待する。
同時開業は関西経済連合会も前面に掲げて活動を展開しており、周辺府県との共同歩調も取りやすい。京都府の山田啓二知事は18日、奈良県が加入していない関西広域連合でルート検討を進める意向を示し、「関西にとって一番いいルートはどこか考えることが重要だ。京都はその中でしっかり主張していく」と強調。関西のメリットを押し出す構えを見せた。
ルート変更を求める京都の動きに対し、奈良県は「すでに計画が決定している。それ以上でも以下でもない」と意に介さない様子。ただ、県内では奈良、生駒、大和郡山、天理の4市が中間駅の候補地に名乗りを挙げており、一本化が課題だ。奈良市の担当者は「県内で足並みがそろっていないのは弱み。大都市の京都が経済や人口規模を背景に働きかけてくれば脅威だ」と打ち明ける。
京都市の門川大作市長は18日、本年度内に京都と奈良を比較した需要予測をまとめ、京都の優位性をアピールすると宣言した。京都、奈良の綱引きは今後、ますます激化しそうだ。
【 2013年09月19日 10時30分 】