安倍晋三首相は19日、福島第1原発を視察し、事故対応に万全を期す国際公約履行に向けた指導力を発揮した。ところが、東電が用意した防護服の胸には、間違った「安部晋三」という名前が記されるなど、東電の危機管理能力に不安を残した。
「事故処理、汚染水処理はしっかり国が前面に出て私が責任者として対応したい」
安倍首相は第1原発視察後、記者団にこう決意表明した。
国際オリンピック委員会(IOC)総会の最終プレゼンテーションで、安倍首相は汚染水漏れに不安を深める国際社会に対し、「状況はコントロールされている」と宣言し、2020年東京五輪を勝ち取った。
この日の視察は、今月下旬の国連総会出席や国会の閉会中審査を控え、「首相が先頭に立って取り組む姿勢」(官邸筋)を世界に発信するため、海外メディアの取材も認めてセットされた。
安倍首相は、同行した東電の広瀬直己社長に、(1)廃炉に向けて現場の裁量で使える予算の確保(2)汚染水を浄化する期限の設定(3)事故対処に集中するため5、6号機の廃炉の決定−を要請した。
これに対し、広瀬社長は「すでに引き当てている1兆円にプラスして1兆円を確保していく」と答え、14年度中に汚染水の浄化を完了させる方針を明言。「5、6号機の取り扱いの判断は年内にする」と回答した。
民主党政権時代に先送りされた問題に、やっと道筋がついた。
本当に汚染水問題が「14年度中に完了」となるなら、それは素晴らしい。ただ、現職首相の名前を間違うような企業にそれができるのか。
政治評論家の浅川博忠氏は「今回の視察は、国内外に向けたデモンストレーションとして行われた。事前に相当根回ししたとみられ、一応成功したといえる。ただ、東電が防護服の名前を間違えたのは『お粗末』ではすまない。一連の事故対応で、東電は後手後手に回り、隠蔽体質も指摘されている。国民の不信感も高い。20年東京五輪前に国有化もあり得る」と語っている。