日馬富士(右)が送り出しで高安を下す=両国国技館で(冨永豊撮影)
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◇秋場所<5日目>
(19日・両国国技館)
横綱白鵬(28)=宮城野=が碧山を肩透かしで下し、初日から5連勝とした。横綱日馬富士(29)=伊勢ケ浜=は新小結高安を危なげなく送り出し、連敗を免れて3勝目を挙げた。大関陣で唯一無敗だった琴欧洲が関脇豪栄道の上手投げに倒れた。他の大関は稀勢の里が宝富士を寄り切り、鶴竜、琴奨菊とともに4勝1敗とした。勝ちっ放しは平幕嘉風を含めて2人。1敗は4大関や豪栄道ら8人になった。昭和以降最速新入幕の遠藤は2敗目を喫した。
◇
日馬富士が本来の速攻相撲を見せつけ、横綱審議委員会の本場所総見で集まった委員たちを黙らせた。2連敗中だった高安をわずか2秒3で料理。「相手のことは考えず、きょうの一番に集中できた」とほおを緩めた。
先場所同様、右の張り差しを繰り出してきた高安。それを見透かしたように左脇を締め、上体が浮いた相手の懐に潜り込む。楽々と背後に回って送り出した。通常、横綱に対しての張り差しは無礼な戦法とも言われる。しかし「若いから勝ちたいんだし何でもしてくるのはいいんじゃないですか。それを受けてやればお客さんも喜びますし」と綱の貫禄を示した。
鮮やかな速攻劇を目の当たりにして「休場も」とざわついた横審メンバーも口をふさぐしかなかった。内山斉委員長(読売新聞グループ本社顧問)は「正念場と思っていたが、勝って一番本人がホッとしているんじゃないか。まだ序盤だし、何とか持ちこたえてほしいね」と激励。宮田亮平委員(東京芸大学長)は「きょうの相撲が本来の日馬富士。速攻は見事だった」と絶賛し「これで不安は払拭(ふっしょく)された。また元の姿に戻った。平常心に戻せると思う」と温かく背中を押した。
もう負けられないというプレッシャーの中、苦手相手からつかんだ貴重な3勝目。北の湖理事長(元横綱)は「まだ精神的にきつい状態。苦しいよ」と話すが、まずは辛口の横審は黙らせた。浮上のきっかけをつかみ、ここから上昇気流に乗っていく。 (竹尾和久)
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