社説:憲法と「9条改正」 武力行使偏重は危うい

毎日新聞 2013年05月05日 02時30分

 憲法改正の発議要件を緩和する96条改正は「改憲のための改憲」であり、自民党の狙いは、戦争放棄、戦力不保持と交戦権否認をうたった9条の改正にある。同党の石破茂幹事長は、96条改正は将来の9条改正を視野に入れた対応である、との考えを表明している。

 現憲法施行から66年、長い憲法論争の中心は9条だった。自民党は結党以来、綱領などで9条改正を目的とする新憲法制定を掲げてきた。

 その自民党が昨年4月、憲法改正草案を発表し、実現を公約した。9条は大きく書き換えられている。危惧の念を抱かざるを得ない。

 ◇「国防軍」は問題が多い

 自民党の草案によれば、自衛隊を「国防軍」に改組するという。

 安倍晋三首相らは、国内では「自衛隊」と呼び、外国には「軍」と説明する詭弁(きべん)はもうやめよう、と主張する。しかし、草案を読むと、そんな、単純な名称変更ではない。

 草案は、国防軍を設置して、海外での武力行使を認め、軍法会議を新設し、集団的自衛権行使に関する憲法上の制約を取り払う内容となっている。自衛隊を「他国並みの軍隊」にしたいということなのだろう。

 自民党の「草案Q&A」は、国防軍の活動の一つである国際平和活動について「軍隊である以上……武力を行使することは可能」とし、集団安全保障における武力行使への参加も「同様に可能」と述べている。1991年の湾岸戦争でイラクを攻撃した米軍を中心とする多国籍軍にも参加できることになる。

 自衛隊の海外での武力行使は、9条によって禁じられているというのが政府の解釈である。そのような抑制された組織として、自衛隊は国連平和維持活動(PKO)に積極的に参加し、数々の任務を成功させ、高い国際的評価を得てきた。

 それを今、変える必要はない。武力を行使する軍を派遣することになれば、紛争当事者などに対する日本の役割や影響力は変容し、過去、築いてきた国際的な信頼や地位を失うことにつながりかねない。

 「国の守り」については、政府は9条の平和主義を基礎に、専守防衛を「本旨」としてきた。自衛隊という名称にはこの姿勢が端的に示されている。だが、自民党内には専守防衛を見直すべきだとの根強い主張がある。「Q&A」に専守防衛への言及がないのは、そうした党内世論を反映した結果なのかもしれない。

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