長崎市議会委:「研究会」設置条例案可決 被爆地域拡大で情報収集 /長崎
毎日新聞 2013年09月12日 地方版
◇委員選任、本田氏除外に批判の声
長崎市が被爆地域拡大問題などに絡み設置する「原子爆弾放射線影響研究会」の条例案が11日、市議会教育厚生委で審議、可決された。だが、被爆体験者団体が委員選任を求めた本田孝也・県保険医協会会長について市が「放射線の人体影響に関する専門家ではない」として除外する方針を表明。一部市議や傍聴していた被爆体験者団体のメンバーから批判の声が上がった。
市によると、研究会は医学、物理学、疫学の専門家6人で構成し、被爆者援護行政の参考にするための情報交換などを行う。委員は長崎大や広島大、日米共同研究機関・放射線影響研究所などから選ぶ方針だが未定。年1回程度開き、初回は年内に開催予定という。
被爆体験者団体が選任を求めている本田氏は内科開業医で昨年、原爆投下直後の米軍の放射線測定データを解析し、被爆地域外も含む広範囲で放射性降下物の健康影響があったとする意見書を作成。被爆体験者が、長崎市などに被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟で原告側が証拠として提出している。
市が本田氏を除外する意向を示したことに対し、池田章子市議(市民クラブ)は「被爆地域拡大の突破口にするため、拡大に結びつく知見を持ち、被爆体験者の思いを代弁している本田氏を委員に選任するのが順当だ」と主張した。
また、重橋照久市議(長崎市民会議)は「被爆体験者に後先はない。思いのこもった行政を進め、採用できるものは何でも採用する、という意欲を示してほしい」と注文した。
傍聴した長崎被爆地域拡大協議会の山本誠一事務局長は「本田氏を除外すると聞き、これからどうなるのか危惧している」。被爆体験者訴訟第1陣原告団の岩永千代子事務局長は「私たちを救済するのではなく拒否しようという姿勢にがっかりした」と話した。【樋口岳大】
〔長崎版〕