絶え間なく刻まれるミシンの音。昼休みの笑い声――。韓国と北朝鮮の「協力の象徴」とされる開城(ケソン)工業団地に、ひとまず活気が戻ってきたようだ。南北の対立から一時閉鎖さ[記事全文]
JR東海が東京・品川―名古屋間で2027年の開業をめざすリニア中央新幹線について、時期の前倒しや一部開業を望む声が相次いでいる。20年の東京五輪開催が決まったためだ。経[記事全文]
絶え間なく刻まれるミシンの音。昼休みの笑い声――。韓国と北朝鮮の「協力の象徴」とされる開城(ケソン)工業団地に、ひとまず活気が戻ってきたようだ。
南北の対立から一時閉鎖され存続があやぶまれたが、ねばり強い交渉の末、5カ月ぶりに再開にこぎつけた。
北朝鮮に安易な妥協はしない姿勢を印象づけたい韓国の朴槿恵(パククネ)政権。事業再開で貴重な外貨収入源を確保したい北朝鮮。
思惑の違いこそあれ、南北が対話によって懸案をひとつ乗り越えたことの意味は大きい。
北朝鮮はこのところ、韓国との関係改善に積極的な姿勢を見せている。
平壌発の報道によると、14日に開かれた重量挙げの国際大会で北朝鮮は韓国の国旗の掲揚と国歌の演奏を認めた。分断後初めてのできごとという。
25日からは、南北で半世紀以上も生き別れになった離散家族の面会事業が3年ぶりに開かれる。韓国側が強く要望してきたにもかかわらず、発展した韓国の情報が流れこむのを嫌う北朝鮮がしぶってきた事業である。
さらに北朝鮮は、金剛山観光事業も再開させたい意向だという。多額の外貨収入が見込める事業だが、北朝鮮兵による韓国民間人の射殺事件が起きたため、5年以上も中断したままになっている。
北朝鮮が、その先にみつめているのが米国である。南北関係の改善も、米国を直接対話に引き出すための環境づくりの一環といえる。
一方、米国は再三の呼びかけに応じていない。しびれを切らしたのか、北朝鮮は最近、原子炉の再稼働の動きを見せている。核開発を続ける構えを示すことで、米国の譲歩を引き出す狙いだろう。
だが、北朝鮮が米国との直接対話を望むなら、そんな挑発はマイナスにしかならない。
いま日米韓が求めているのは、非核化に向けて北朝鮮が誠実な態度を取ることであり、ウラン濃縮活動の停止といった具体的な行動にほかならない。
18日に北京であったシンポジウムで北朝鮮の金桂寛(キムゲグァン)・第1外務次官は、朝鮮半島の非核化をめぐる6者協議など「前提のない対話」の再開を強く求めた。
それでも対話が開かれないのは、北朝鮮がこれまでのように口約束だけして食糧支援などを得る算段ではないか、との不信感がぬぐえないからだ。
核放棄の意思と行動を示し、対話を積み重ねるなかでしか活路は生まれない。北朝鮮は改めてそのことを悟るべきだ。
JR東海が東京・品川―名古屋間で2027年の開業をめざすリニア中央新幹線について、時期の前倒しや一部開業を望む声が相次いでいる。20年の東京五輪開催が決まったためだ。
経団連の米倉弘昌会長は、1964年の東京五輪に合わせて開業した東海道新幹線を引き合いに、20年に「リニアをせめて名古屋まで」と発言した。菅義偉官房長官も「五輪で海外から来る人たちに部分的に乗ってもらえれば」と語った。
こうした意見に対し、JR東海の山田佳臣(よしおみ)社長は「工事は急げるものではない」と否定的な姿勢を示した。当然である。
東海道新幹線は着工から5年で開業したが、時間がかかる高架橋をなるべく避けたため、雨による路盤崩壊に長く苦しめられた。山陽新幹線でも90年代以降、トンネルや高架橋のコンクリート崩落事故が続く。8年の突貫工事で粗悪な素材が使われた影響が指摘されている。
リニアでは、こうした拙速の愚を繰り返してはならない。
JRがおととい公表した環境アセス準備書を見ても、工事の難しさがよくわかる。
品川と名古屋では駅の営業を続けたまま、地下30〜40メートルまで掘ってリニアの駅を設ける。品川から相模原市までの42キロもトンネルだ。人口密集地の下で、5キロごとの非常口や工事拠点の用地確保はこれからになる。
3千メートル級の山々が連なる南アルプスは、延長25キロのトンネルで貫くという。JR側は「日本の技術力は進歩している」というが、過信は禁物だ。
過去の長大トンネル工事では、予想もしなかったトラブルが起き、作業員が亡くなったり、工期が大幅に延びたりした例が少なくない。JRは開業目標の27年にこだわることなく、安全最優先でことを進める姿勢を貫いてほしい。
沿線住民の合意形成に力を注ぐことも欠かせない。磁界、騒音、振動、建設残土……。すでに懸念の声が多く上がっている。理解を得られないままでの「見切り発車」では、新時代の公共交通として歓迎されないだろう。
福島第一原発事故の後、全国の原発が止まり、リニアの電力消費量の多さにも厳しい目が向けられている。JRの経営陣は原発再稼働に期待感を示すが、時代に逆行していないか。
JRは新幹線で省エネ性を追求してきた。リニアでは、太陽光など再生可能エネルギーでの自家発電を大胆に導入し、原発、化石燃料に依存しないエコ鉄道を目指してもらいたい。