がん患者らから摘出した腎臓を第三者に移植する「病気腎移植」をめぐり、備前市立吉永病院(同市吉永町吉永中)で不要な手術を施され、がんではない腎臓を摘出されたとして、岡山県内の70代女性が病院を運営する同市に約3700万円の損害賠償を求めた訴訟で19日、和解に向けた協議が進んでいることが関係者への取材で分かった。早ければ、10月10日に予定されている岡山地裁の和解期日で成立する見通し。
19日、備前市が議会に提案していた、和解に向けた準備金1700万円を盛り込んだ病院事業会計補正予算案が可決された。
訴状では、女性は2006年7月、吉永病院の万波廉介医師から「九分九厘がん」との診断を受け、左腎臓を摘出。術後、腎臓はがんではなく一部が石灰化する症状だった上、摘出された腎臓は人工透析患者に移植されたことが判明した。
術前の検査はがんを否定する所見だったことなどから、女性側は「検査結果を十分に検討せず、誤診した万波医師の注意義務違反は明らか」として10年2月に提訴していた。
和解に向けた協議について、女性の代理人は「病院側が注意義務違反を認めた結果と受け止めている。和解金の額は満足とは言えないが、一定程度納得できる」と話している。一方、備前市は「和解が成立していない現段階ではコメントできない」としている。