●1ミリシーベルトの基準は除染利権を生むだけ
東京電力福島第1原発事故で、放射性ヨウ素を体内に取り込んだことによる甲状腺被曝(ひばく)線量(等価線量)が100ミリシーベルトを超える作業員は、推計で1973人に上ることが判明したとのことだ。
この人数は当初の発表よりもはるかに多い人数だ。東電は最初から正直に発表する謙虚な企業姿勢を示すべきだったと思う。
ただし、100ミリシーベルトを超えるからといって、早急に危険だということでもない。例えば、統計値で見ると100〜200ミリシーベルトだと癌になる確率が1.08倍になる試算だ。野菜不足や受動喫煙がこの範囲にある。さらに高い数値である200〜500ミリシーベルトには運動不足、高塩分食品、500〜1000ミリシーベルトには肥満、痩せ。さらには1000ミリシーベルト以上だと毎日3合以上の飲酒、喫煙者が含まれ、このレベルになると癌になる確率も1.6倍になる。
もちろん100ミリシーベルトが安全だと言うつもりはないが、1ミリシーベルトを基準として大騒ぎするのは行き過ぎだと思う。先日、福島第一原子力発電所の事故の現場で指揮を執った吉田元所長が食道がんのため亡くなったが、これを福島での被ばくと関連付ける人もいるようだが、それは違う。
0歳〜5歳の子どもが100ミリシーベルトを超える被ばくを経験したとき、20年後に甲状腺がん、乳がんになったという事例はあるが、数年のうちに食道がんを発病するというのはまず考えにくいことだ。
以前、東京大学大学院教授が内閣官房参与を辞任した。その際、記者会見で「10ミリシーベルトでは子供たちがかわいそうだ」と涙を流した。この涙の辞任記者会見を受けて政府は発作的に、福島の除染を「1ミリシーベルトを目標に」となったわけだが、私に言わせれば1ミリシーベルトは自然の放射能と同じレベルだ。1ミリシーベルトの除染を目指すとなると、永遠に除染は終わらないだろう。結局、除染利権を生んだだけで全く効果はないのだ。
ただちに目指す水準を10〜20ミリシーベルトに引き上げるべきだろう。私としては、30ミリシーベルトくらいの水準でも問題はないと思っている。
●活断層の有無に関わらず、もんじゅは停止するべき
原子力規制委員会の調査団は18日、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅの敷地内にある断層について、2日間の現地調査を終えた。調査団の島崎委員長代理は「すぐ結論が出る状況ではない」と述べた。
17日に指示した追加調査の結果を見てから判断する意向で、結論が出るのが長引く可能性もあるとのことだが、そもそも活断層によってもんじゅの再稼働を決定すること自体がズレていると私は思う。
客観的に言って、活断層の有無に関わらず国民世論から見て、もんじゅの再稼働はありえない。稼働している期間に、ある程度のデータも取得できたはずだから、それを後世に残すことを考えるべきだ。米国も英国もフランスも、高速増殖炉を停止している。日本にしても、すでにもんじゅに1兆円規模の資金を投じている。もう潮時だと思う。
●今年の夏も、節電の工夫で乗り切れる
夏の節電要請を1日から行っている政府は、家庭向けの節電対策メニューを節電ポータルサイト(http://setsuden.go.jp/)で紹介している。例えば、エアコンの設定温度を26度から28度に設定すれば電力使用量を10%削減可能。日中の照明消灯で5%削減が可能になるということだ。
エアコンの温度調整など具体的な指示があって、これは有効な指示だと思う。さらに言えば、夏の甲子園をテレビで見るときなど電力消費がピークを迎えるときには、エアコンを動かさないなど工夫をすれば、今年の夏も何とか乗り越えられるだろう。
一方で、電力危機問題が取り沙汰されているのが韓国だ。日経新聞は16日、「韓国 電力危機、動じないサムスンの「特権」」と題する記事を掲載した。23基ある原子力発電所の3分の1が不祥事などで稼働を停止するなど、この夏、未曾有の電力危機が訪れると指摘されている。
しかしそうした中、サムスングループを筆頭に大手企業に混乱は広がらないということだが、これは中小零細企業など規模の小さい企業から電力カットになるため、当面の間サムスンなどの大企業は心配がいらないということだ。率直に言って、韓国というのはとんでもない対応をする国だと感じる。