濁流に囲まれ、従業員が救助隊員に助けられた工場。周囲は村道(右)が大きく削られ、岩なども流れ込んだ=16日午後2時15分、阿智村伍和 |
大型の台風18号は16日午前8時前、愛知県豊橋市付近に上陸し、関東甲信から東北を縦断して太平洋に抜けた。午前10時ごろに県南部を通過し、県内は南、東部を中心に各地で激しい雨となった。下伊那郡阿智村浪合では、午前9時19分までの1時間降水量が73・5ミリと観測史上最大を記録。河川の増水で、村内にある工場周囲の地面がえぐられ、従業員15人が一時孤立した。JR飯田線は複数箇所で土砂崩れがあり寸断された。国道254号三才山トンネルの上田市側出入り口付近では土砂が流出。下水内郡栄村の中条川上流では土石流が発生し、建物に被害が出ているほか、下流域の20世帯54人に避難指示が出された。鉄道の運転見合わせや、高速道を含む道路の通行止めも相次ぎ、交通網もまひした。
県危機管理部の午後9時現在のまとめによると、阿智村の工場から救助された従業員のうち4人が、避難中に手を切ったり気分が悪いと訴えたりして救急搬送された。いずれも軽症という。
栄村の中条川上流では午後2時半ごろから複数回、土砂が崩れ、下流にある村森林組合事務所に土砂などが流入し、1階部分の一部が損壊した。村によると、現場は2011年の県北部地震で土砂崩落があった場所。村は雨で地盤が緩み、震災時にたまった土砂が流れ出したとみている。
長野地方気象台によると、15日午前0時の降り始めから16日午後4時までの総降水量は、阿智村浪合で293ミリ、飯田市南信濃216・5ミリなど。白樺湖で3時間降水量が77・0ミリと観測史上最大を記録した。
河川の増水や土砂崩れの恐れなどで、南佐久郡南牧村は一時、大芝地区の41世帯136人に避難を指示。飯田市上村南信濃地域の1021世帯2196人、小県郡青木村の浦野川流域の50世帯120人など、計1205世帯に一時、避難勧告が出された。
建物被害は、上田市や飯田市などで計16棟が床上浸水、計51棟が床下浸水。諏訪郡富士見町、上伊那郡南箕輪村、長野市と駒ケ根市で、風でトタン屋根がめくれるなどの一部損壊が計6棟あった。
中部電力長野支店によると、県内では16日午前0時すぎから飯田市や長野市など各地で停電が発生し、同日午後9時までに延べ2万5210戸が停電。同日午後11時現在約250戸が停電している。
交通網も混乱し、JR東日本によると、突風で架線設備の一部が線路内に散乱した影響などで、長野新幹線は一時運転を見合わせ、上下計10本に最大で59分の遅れが出た。中央東線と篠ノ井線、小海線は、雨量が規制値を超えるなどしたため全区間で一時運転を見合わせた。飯山線は一部区間で終日運転を見合わせ、信越線は長野―黒姫、妙高高原駅間で終日折り返し運転をした。しなの鉄道は軽井沢―小諸駅間で一時運転を見合わせた。県営松本空港(松本市)の発着便は欠航した。
高速道では、県内の中央道や長野道、上信越道、中部横断道の一部が一時通行止めになった。中部横断道佐久南―佐久中佐都の上下線は午後11時現在も通行止めが続いている。