朝鮮日報日本語版 9月19日(木)8時15分配信
今年1月4日午前2時、ソウル市麻浦区倉前洞にあるチムジルバン(サウナ主体の韓国式健康ランド)の仮眠室で、寝ようとしていたクク容疑者(47)とユさん(51)が言い争いになった。クク容疑者が「いびきがうるさくて寝られない」としてユさんを蹴って起こしたことが発端だ。次第に大きな声を出すようになった二人は、1時間にわたって言い争い、やがてもみ合いになった。高血圧を患っていたユさんは、急性心筋梗塞で倒れて死亡した。ソウル市の麻浦警察署は、もみ合いによってユさんを死亡させた疑いで、クク容疑者を逮捕した。
最近韓国社会では「カッとなる」という言葉で表現される「血気怒気」が日常生活の中で広まりを見せている。昨年3月には、ソウル市の地下鉄7号線の君子駅で70歳の男が77歳の乗客を押し倒し、顔を殴って死亡させる事件が発生した。二人のけんかは、地下鉄に乗る際に乗客が男にぶつかったことで始まった。また、1月には、現職国会議員秘書(37)がソウル市瑞草区瑞草洞にあるコンビニのATM(現金自動預払機)前で「現金の引き出しに時間がかかり過ぎる」として、会社員(31)の髪の毛をつかんだ上、数回にわたって腹を蹴り上げ、逮捕された。この秘書は「相手が先に侮辱する言葉を言ってきた。髪の毛をつかんだことは認めるが、腹部を蹴り上げたというのは誤解」と釈明した。
昨年にはソウル市中区の南山で、70代の男性が、30代の女性から口にするのも恥ずかしいような暴言を聞かされた。男性が、花を折った女性の息子に「花を折ってはいけない」と注意したためだ。女性は「あんたみたいな○○のような○○のために、この世の生活が嫌になる。警察を呼ぶ」と叫び、男性に殴り掛かった。警察が駆け付けたものの、女性の前ではなすすべがなかった。当時、事件の一部始終を目撃していたある市民は「自分の子どもが花を折るという非常識な行動に出たにもかかわらず、30代の女性は逆に相手の男性に多くの暴言を浴びせた。こんな姿を見て育った子どもが将来どうなってしまうのか、考えただけでも恐ろしい」と話した。
韓国は、人口の大半が集合住宅で暮らしている。人口住宅総調査によると、韓国の国民の65%はマンションなどの集合住宅で生活しており、91.1%(2011年都市計画現況統計)は人が密集する都市部に住んでいる。しかし、配慮に欠けるというのだ。
多くの乗客が利用する地下鉄などで見受けられる「血気怒気」は、今では日常茶飯事と化している。昨年ソウルの地下鉄4号線では「すれ違いざまに足を蹴られた」として男性に暴言を浴びせ、暴力を振るった女性の動画が、インターネット上で公開された。女性はけんかを止めに入った乗客の髪の毛までも引っ張り回し、「怒り」を抑えることができないようだった。
サービス業に携わる人々にとっては、「カッ」となる人々は恐怖の対象だ。ソウルのある区役所で駐車場を管理している職員は「自動車に近寄るだけでも大声を上げる人は多い。何も言っていないのにまず怒り出すケースが多いため、人が乗っている車には近寄らないことにしている」と話す。京畿道のある公共機関のカウンセラーは「取るに足らないことに対して腹を立て、上司を呼ぶよう怒鳴りつける人が多い。顧客に対し、顧客が怒っている部分について説明しようとしても、言葉を聞く前からすでにカッとなってしまう」という。2月4日、ソウルのある大型量販店では、顧客が「会計が間違っている」と従業員に暴力を振るう事件が発生した。この顧客は、1時間にわたってレジの女性従業員に屈辱的な言葉を浴びせ、下着を投げ付けた上「お前のような○○は警察に突き出してやる」と大声を上げた。量販店の関係者は「怒りを抑えることができずに従業員に暴言を吐いたり、殴り掛かったりする顧客が、1週間に少なくとも1人はいる」と表情を曇らせた。
こうした「血気怒気」は、家庭内でもよく見受けられるようになった。京畿道の議政府警察署は2月13日、自分を叱り付けた父を蹴り倒して踏み付け、死亡させた疑いで、41歳の男を逮捕した。警察の調べによると、男は正月休みだった2月11日午後1時30分ごろ、議政府市虎院洞にある父(71)の自宅で「就職もできずに部屋の片隅でこそこそしているどうしようもないやつ」と言われたことに腹を立て、父を押し倒し、腹や胸に十数回にわたって暴行を加え、内臓破裂で死亡させた疑いが持たれている。男は、警察の調べに対し「父に責め立てられ侮辱されたことで頭にきて、父を押し倒し、腹と胸を蹴った」と話した。
最終更新:9月19日(木)13時10分