今年の旧正月連休中、マンションの騒音問題が原因の殺人・放火事件が相次いだ。「その程度の問題で乱暴な犯罪を働くなんて理解できない」という反応も多い。韓国社会が忍耐力を失い、衝動的な社会となったのではないかという指摘も出ている。
このように「かっとして」犯罪を働くケースが最近頻繁に起きている。慶尚北道の星州では、旧正月を迎え帰省した息子が、叱られたからという理由で母親を殺害し、7時間後に逮捕されるという事件が起きた。一山警察署は2月12日「容疑者は37歳の未婚の男(会社員)で、事件の前日、夕食の時間に母親(61)に『どうしてそんなに音を立てながら食べるのか』と小言を言われ、翌朝、衝動的に母親の首を絞めて殺した」と発表した。男は母親を殺害した後、京畿道坡州市の自宅に戻ったところを警察に逮捕された。
1月23日には、大田で27歳の男が同じ低層マンションに暮らす女性に(23)に「不細工」と言われたことに激怒し、その女性を刃物で刺して殺害するという事件が発生した。この男は「子どものころから容姿にコンプレックスがあり、容姿のせいで就職もできない。そんなときに容姿を悪く言われたため急に腹が立ち、犯行に及んだ」と陳述した。
警察庁の犯罪統計では、瞬間的なストレスで「衝動的殺人」を犯す容疑者は2000年(306人)以降、毎年増加し、10年には465人に至った。「衝動的放火」も2000年の347人から10年には583人へと増加した。
精神科の医師らは、このような犯罪を衝動制御障害の一種「間欠性爆発性障害」と見ている。これは、普通に腹が立つ状況に比べて過度に怒りを爆発させ攻撃的な行動をする精神障害だ。江北サムスン病院精神健康医学科のシン・ヨンチョル教授は「理性的判断を下す前頭葉の機能が瞬間的にまひし、自分が起こした行動がどのような結果をもたらすかを予測できないまま殺人や放火を犯す。就職、結婚、家族関係の中で生じていた葛藤などが積もり積もっている状態のときに、瞬間的な怒りが発作の引き金となるケースが多い」と話した。
06年、米国ハーバード大医学部の研究チームの調査によると、成人の間欠性爆発性障害は成人全体の7.3%で、一生に1度以上発生する。成人の3.9%では、最近1年間に爆発性の怒りが発生していた。女性よりは男性に多く、普段から「そう」や鬱(うつ)の症状を繰り返す「そううつ病」があったり、注意力欠陥や過剰行動障害があったりする場合などに多く発生する。国内の病院で診断を受けた衝動制御障害の患者は、07年の1660人から11年には3015人に増加した。
専門家は忍耐力不足という個人的な性格に葛藤が深刻化するような社会風土が結び付いて衝動的な犯罪が増加していると分析する。東国大学警察行政学科のクァク・テギョン教授は「常に自分が正しく、自分を威嚇する相手を敵と見なして直ちに懲らしめようとする極端な利己主義がはびこっている結果だ。また、急激な経済的変化や社会的葛藤の中で、相手への思いやりや対話という文化が衰退しているためだ」と話した。
高麗大病院精神健康医学科のイ・ミンス教授は「すぐに結果を出そうという韓国人特有のパルリパルリ(急げ急げ)文化によって、我慢し妥協するというプロセスが待てなくなっている」と分析した。