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<サンデー時評>私が改憲論者になったのは…

サンデー毎日 9月18日(水)17時0分配信

〈九条改正は慎重に〉

 といった程度の現状維持、護憲寄りの姿勢をとってきた。メディアは護・改憲二分が現状といっていい。

 ◇「仕掛ける戦争」は放棄だが、仕掛けられたら…

 さて、肝心なのは世論である。これが厄介だ。政党は世論をこわがる。メディアは気にする。しかし、自民党など改憲派政党が改正草案を示し、メディアが一応の指針を示しても、世論はほとんど沸かない。熱っぽい議論にならない。さながら根なし草のように揺れていると映る。何かの拍子に針が大きくぶれたりするのだ。

 そんななかでも、〈九条信奉論〉が影響力を持っている。全国的なネットワークが作られ、大衆的な運動として根づいているようだ。新聞にはPRの全面意見広告が載ったりする。この運動の核になっているのが、ノーベル文学賞受賞者の大江健三郎さんら著名人が作っている〈九条の会〉で、折に触れ国民向けアピールをしてきた。

 アピールは単純な話である。九条を広めれば世界は平和になる。平和国家を標榜(ひようぼう)する平和憲法を世界の各国が受け入れれば、戦争はなくなり、軍隊は姿を消すという理屈はその通りだが、そんな絵空事が現実に世界に通用すると大江さんたちは本気で考えているのだろうか。現に発信元の日本には軍隊がある。見果てぬ夢を追うのは結構だが、それは宗教の世界であって、政治の目標ではない。

 だが、〈九条信奉論〉を信奉する人が意外に多いのに驚かされるのである。敗戦の後遺症は百年くらいでは消えないということかもしれない。先日も、『毎日新聞』に埼玉県の六十代男性の、次のような投書が載った。

〈自民党は新しい憲法草案などで自衛隊を国防軍に変え、集団的自衛権の行使も可能にしようとしている。日本は軍隊を持って「普通の国」になるべきだという人々もいる。しかし、たくさんの「普通の国々」でできているこの世界は、テロや紛争が絶えることがない。

 日本は戦争の苦い経験から平和国家という道を選んだ。六十八年間一度も戦争に巻き込まれずここまでやってきた。日本は戦争をしない平和国家であるというイメージを全世界の人々が持っていると思う。またそれ故に日本という国は信頼されている〉(九月六日付)

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最終更新:9月18日(水)17時0分

サンデー毎日

 

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