この流れに乗って、「固体ロケットは安全保障上重要な技術なので絶対秘匿」ということにしてしまえば、技術革新を促す場を失うことになる。機微に触れる技術の秘匿は必須だが、研究者らのオープンな議論の場を潰してしまっては元も子もない。
商業打ち上げと継続した技術開発の両立を
イプシロンの将来には2つの側面が存在する。1つは低コストで小型衛星を打ち上げるコマーシャルな宇宙輸送系という位置付けだ。こちらは、何らかの形で国際的な商業打ち上げ市場に食い込んでいけるように、政策面で的確にサポートする必要がある。打ち上げサービスには継続性と信頼性が重要なので、どこかのタイミングでロケット仕様をフィックスして、「同一仕様を多数打ち上げる」ということも必要になるだろう。
もう1つは、安全保障も含めて日本の固体ロケット技術を維持発展させるための技術開発プラットホームとしての役割である。イプシロンがこの役割を担うとすると、かつてのMロケットと同様に「どこまでも技術開発を続けて進化し続けるロケット」という位置付けになる。
確定した仕様のイプシロン運営を民間移管し、その一方でJAXAは技術開発を続けるなど、両者を満たす方法は存在しうる。今後、内閣府・宇宙戦略室は、一見矛盾するように見える2つの側面を同時に促進する施策を打ち出す必要がある。