橋下徹大阪市長による公開書簡−その3
今回は、橋下徹大阪市長の慰安婦発言をを支持している人たちに対してのものである。
ネットを見ると、橋下市長を支持している人たちの主張と、橋下市長本人との主張には大きな隔たりがあるように思う。 「5月13日の発言も含め、私は、慰安婦の利用を容認かつ正当化したことは一度もありません。戦時中の旧日本兵による慰安婦利用は、女性の尊厳と人権を蹂躙する決して許されないものだというのが、一貫した私の認識です。本人の意に反して、戦地で慰安婦として働かされた方々が被った苦痛、そして深く傷つけられたお気持ちは、筆舌につくしがたいものであることを私は認識しています。こうした私の認識は、日本政府が表してきた認識と同じものです。すなわち、1993年に日本政府が元慰安婦へお詫びと反省の意を表した「河野談話」の認識や、元慰安婦の方々に総理大臣のお詫びの手紙とともに償いを行いました「女性のためのアジア平和国民基金(略称アジア女性基金)」の活動の基盤になった認識と同じものであります。河野談話と当時の総理大臣のお詫びの手紙を同封いたしましたので、ご参考までにご覧下さい」(2頁)
ここで橋下市長は、自分の認識は「河野談話」と同じものであると述べている。しかし、慰安婦問題を否定し、橋下市長を支持する人たちは、「河野談話」こそ慰安婦問題の元凶であり、即時に否定する新たに「談話」を出すようにと主張している。
このようなズレがありながら、慰安婦問題を否定しようとする人たちは、どうして橋下市長を支持できるのであろうか。明らかに矛盾している。
また、否定派の人たちは、軍が主体として行っていたのではなく、周旋業者(女衒)が行っており、慰安婦とは売春婦であるという主張をよくしている。しかし、橋下市長は公開書簡の中で次のように述べている。
「慰安所の設置・管理及び慰安婦の移送に関与した旧日本軍の間違いは、どんなに強調してもし過ぎることはありません。また、軍の要請を受けて業者が慰安婦を募集したこと、甘言など本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあること、慰安所における生活が痛ましいものであったことは、到底受け入れられるものではありません。私は、いかなる意味でも、慰安婦問題を正当化する議論に与しません。」(2頁)
ここで橋下市長は、「軍の要請を受けて業者が慰安婦を募集したこと」と述べており、周旋業者(女衒)が勝手にやっていたのではなく、「軍の要請を受けて」周旋業者(女衒)が「慰安婦を募集」していたと明確に述べている。橋下市長を支持しながら慰安婦問題を否定する人たちは、この橋下市長の主張を支持できるのであろうか。
また、「甘言など本人たちの意思に反して集められた」という明らかに、いわゆる売春婦とは違うこと、一般の女性であることも述べている。慰安所における生活も「痛ましいもの」として、否定派がよく主張している「自由があった」、「楽しかった」というものとは全く違うとも述べている。
慰安婦問題を否定している人たちには、「韓国によるゆすりたかり」とこの問題を位置づけている人たちもいるが、この点については橋下市長は次のように述べている。
「今必要なのは、冷静で公平な歴史的検証であり、双方の協力による歴史的検証の努力は、未来に向けた真の日韓関係の構築のためにも必要だと考えます。」(4頁)
慰安婦問題を韓国による「ゆすりたかり」などではなく、「双方の協力による歴史的検証の努力」を行うべきだと主張している。この言葉を橋下市長支持派の人たちは容認できるのであろうか。
橋下市長による慰安婦問題発言により、慰安婦をめぐる状況が更に拡大していく中で、感情的な・排他的な言動ではなく、冷静な実証的検証作業が必要とされていることは疑いもない。
日本軍による慰安婦問題に関しては、日本人の研究者が精力的に取り組んでいる。韓国軍による慰安婦問題に関しては、韓国人の研究者が精力的に取り組んでいる。ナチスによる慰安所問題に関しては、ドイツ人の研究者が精力的に取り組んでいる。これが現状である。
つまり、その国の慰安婦・慰安所問題を精力的に取り組んでいるのは、その国の研究者である。しかしながら、それら研究を妨害しようとする勢力がいることもまた確かである。そのような勢力は、その国の中で「愛国者」を自称し、自国にとって都合の悪い事柄には目をつぶる、あるいはウソをついてでも否定しようとする。日本軍による慰安婦問題を否定する人たちが自称「愛国者」の日本人であるように、韓国では自称「愛国者」の韓国人、ドイツでは自称「愛国者」のドイツ人である。
このような閉鎖的な思考しか持たない人たちによる感情的な言動は、この問題の解決には何の役にも立たない。
慰安婦問題を否定している人たちは、この稿で見た橋下市長の発言を支持できるのであろうか。単に雰囲気だけで支持しているだけのようで、実際にどれくらいの人たちが橋下市長の公開書簡を読んでいるのか疑問を持たざるを得ない。
この稿終わり。 |
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