ある日、私たちの生活に颯爽と現れ、忽然と姿を消した感のあるMD。そのブームは5~6年という短い期間だったといいますが、青春時代の思い出と共に今も鮮烈な印象が残っています。
彼の音楽センスのルーツがわかるかも!? 初めて自分のおこづかいで買ったCDはナニ?
家で音楽を再生したり、録音した音楽を友人に貸したりと様々なシーンで活躍してくれたMD。使わなくなった今も捨て切れず自宅に眠っている…そんな人もいるのでは? そこで、デジタルグッズライターの山下達也さんによる解説のもと、MDの誕生から終了までの歴史と思い出を振り返りたいと思います。
そもそもMDのウリとは何だったのでしょうか?
■録音した後に曲順の入れ替えができる
「好きな曲だけ選んで録音したりと自分好みの1枚を作ることができ、数曲のためにわざわざCDを持たずにすむように。それまで音楽の録音と編集はカセットテープの役割でしたが、最大の違いは録音した後に曲順の入れ替えなどの編集が可能という点。失敗したらすべて消去しやり直す必要があったテープに比べ、この便利さは画期的でした」(山下さん)
■コンパクトディスクよりもコンパクト
「CDは直径120mm、厚さ1.2mmと鞄の中に入れておくにはちょっと大きめのサイズ。一方、MDは『ミニディスク』の名前のとおり、横72mm×縦68mm×厚さ5mmというコンパクトサイズで持ち運びに最適でした」(同)
■カセットとCDの利点を兼ね揃えた機能性
「当時、中高生の間では録音・編集ができるカセットテープ派とCDをそのまま聴けるCDプレーヤー派に二分していました。そんななか、両方の利点を兼ね備え、さらに音質も向上したMDプレーヤーは衝撃的だったんです」(同)
CDの約半分の小ささで、コンパクトディスクよりもコンパクトサイズで登場したMD。 1992年の発売当初は5~7万円台とちょっと高めの価格設定だったものの、2000年ごろには3~4万円台のものも展開され、購入しやすくなったことでさらにユーザーが拡大。その頃には、学生の間でも一人一台が珍しくないほどの一大ブームになりました。
そんなMD全盛の2000年、ひっそりとiPodが登場します。当初はMacのみの対応だったiPodに注目する人はあまりいませんでしたが、段々とその存在に脅かされることに。
■iPodの台頭とともに衰退
「MDブームは5~6年で去りました。2000年頃から流行りはじめ、ピークは2004年頃までです。2003年にiPodがWindows対応してから徐々に人気を奪われていきましたが、パソコンを持たない人はMDを支持。この頃はまだMDユーザーはたくさんいました。本格的に下火になったのはパソコンが普及してきた2005年頃。iPodの価格も下がったこともあり、完全にユーザーが移行してしまったんです」(同)
iPodという強力なライバルの登場とともに人気が下火となったMD。しかし、その状況下で必死にもがいた痕跡も…。
■パソコン対応のMDでiPodに対抗!
「iPodに対抗し、パソコンから音楽を取り込める『NetMD』という製品も発売されたんですが……曲数があまり入らず、全く普及せず。しかもパソコンがないという理由で支持していたMDユーザーにはむしろ逆効果だったようで、結果は大失敗でした(苦笑)」(同)
時代に合わせて改良した努力が、裏目に出てしまったという切ない結果に。このあたりにMDの哀愁を感じてしまいます…。
そんなMDも、本家・ソニーが2013年3月にMDプレーヤーの生産を終了。それに続くようにオンキョーも同年7月に撤退。ともに青春を過ごした私たちからすれば、寂しい気持ちになってしまいますね。
「実はMDって世界ではあまり流行らなかったんです。なので日本で終了したということは事実上、世界で終了ということと一緒ともいえるんです」(同)
ということは、まだ手元にあるMDはすごく貴重なのでは? たまには引っ張り出して聴いてみるといいかもしれませんね。
(志賀むつみ/verb)