9割の日本人に必要のない英語を、なぜ日本人は必死に学ぶのか?


ID 10069170 9割の日本人に必要のない英語を、なぜ日本人は必死に学ぶのか?
あなたは、普段のお仕事で英語を使う機会はありますか?

もしくは、直接使う機会は泣けれど熱心に英会話スクールに通ったりTOEICの勉強をしたりと、英語学習の機会をもうけていますか?

「若いうちのビジネス読書は「質」より「量」が大切だと思う3つの理由」では、元マイクロソフト社長、成毛眞さんの著書について紹介しましたが、成毛さんの著書でもう一冊、英語学習に関する興味深い書籍があります。

日本人の9割に英語はいらない

『日本人の9割に英語はいらない』ータイトルだけでも十分挑発的ですが、内容は更に挑発的です。

「英語業界のカモになるな!」
「英語ができても、バカはばか。」
「頭の悪い人ほど英語を勉強する」

このコピーだけ見ると不快に思う方は多いかもしれませんが、主張されていることは至極もっともで、納得する部分も多いというのが私の感想です。

外資系企業で社長を勤めていたのに、英語を話せない著者。

「9割の人は英語が話せなくても全く問題ない」と主張するのに十分な経歴の持ち主だと思いますが、この「9割」というのも、ただの「釣りコピー」ではなくちゃんとご本人が統計データから算出した数字です。

「英語」(語学)というものの本質を捉えた上で、「英語が必要の無い人が必死になって(日本で)英語を勉強している」ことの無意味さを語る、非常に刺激的で興味深い内容になっています。

「なぜ英語を勉強しているのか?」という問いに明確に答えられない中勉強をしている方は、一読の価値がある一冊です。

 

なぜ日本人の9割は英語を勉強する必要がないのか?

ID 10063047 9割の日本人に必要のない英語を、なぜ日本人は必死に学ぶのか?
本書の主張を関係に言ってしまえば、

「コミュニケーションの手段でしかない英語を、緊急の用途もなく多くの時間とコストをかけて(日本で)身につけても時間のムダ(そもそも身に付かない)」

というものです。

“語学に「備え」は通用しない”のであり、「いつか必要なときのために」英語を勉強するよりも、もっと身につけるべきスキルや教養がある、ということです。

こうした主張の中で私が一番興味深かったのは、「なぜ日本人は日本語という高度な語学を習得しておきながら、わざわざ英語を身につけようとするのか」という点です。

世界には、英語を習得しなければ(母国語では)「学問ができない国」や、英語を勉強しなければ食い扶持を得られないという「経済的な理由がある国」、そもそも英語圏の国に植民地化されていた歴史的な背景から「英語を習得しやすい国」など、様々な境遇の国があると言います。

この点、日本では、「英語を身につけなければ国が存続しない」、「学問ができない」というわけではありません。また、鎖国状態が長く、植民地化されたこともない日本は、そもそも英語を身につけるのに苦労する民族であるとも言います。

日本は、明治時代の開国する前から外国語と付き合い、時の学者たちが、外国語で書かれた学術書を日本語に翻訳していたからこそ、高度な学問を「日本語で」学ぶことができると言うのです。

つまり、英語を習得しなければ学問ができなかったところ、先人の功績によって「母国語で」高度な学問をできるようになった稀少な国であるということです。

この点は日本人として誇りに思っても良いのではないでしょうか。私の知らなかった視点で、非常に興味深く感じました。

このように、ほとんどの人は使う機会も場所もほとんどない。それなのになんでそんなに必死になって英語を勉強するのでしょうか。

語学は日常的に使うからこそ身に付くものであって、「将来の備えのために」必死になって勉強していても時間のムダだというのが著者の主張です。

 
本当に英語が必要な1割の人とは?
これは、ビジネスにおいて英語力がそのままバリューにつながり、ひいては収益拡大につながる職業ということです。

・外資系企業に勤務するビジネスマン
・ホテルの従業員
・デパートの店員
・外国人観光客向けの手瀬の店員
・研究者や医師(海外の論文を読むため)

こうした方々は、外国人と直接コミュニケーションを取る機会が多く、かつそのコミュニケーション力によって顧客満足度が変わってくる職業のため、英語を取得する必要があります。

例えば、私が広告代理店時代にお仕事をさせて頂いていたホテル業界のクライアント様は、社をあげて英語、韓国語、中国語の勉強を行っていました。これは外国人観光客の宿泊が増えている中、適切なコミュニケーションがとれることが顧客満足度(ひいては会社の収益)につながるという明確な理由があるからです。

打ち合わせの場では、(冗談で)私も英語で話すよう求められ、全く対応できず恥ずかしい思いをしましたが、私は「英語を勉強しよう」とまでは思いませんでした。それ以上に優先的に学ぶべき仕事があると思っていたからです。

一年に何回あるともわからない、その刹那的な恥ずかしさを払拭するためだけに英語学習に時間とコストを投資するのは、自分のキャリアプランを考えたところ生産的ではないと判断したからです。

本書では「年に一回しか乗らないのにマイカーを買うのと同じくらいムダな行為」と表現されていますが、正に言い得て妙だと思います。

 
英語を必死に勉強しているのは「必要のない9割の人」
上で述べたように、英語が仕事上「本当に」必要な人は1割の人に過ぎません。しかし、必死になって勉強をしているのはむしろ必要のない残りの9割の人であると著者はいいます。

ここに、著者が「英語ができてもバカはバカ」と言う挑発的な主張をされる理由があります。

つまり、英語学習に投資した時間とコストが、どのような形で、どれくらいの果実となって回収できるのかを考えずに、「英語が出来る人は優秀」「英語は身につけておいて損はない」「英語ができなければこれからのグローバル社会で生き残って行けない」という「勘違い」から、「とりあえず」「日本で」勉強をしている人をバカだと言っているのです。

上で述べたように“語学に「備え」は通用しない”のにも関わらず、こうした理由で勉強している人があまりにも多いということです。

本気で身につけたいと思っているのであれば、海外に行って日常的に英語に触れる環境でないと身に付かないのにも関わらず、日常的に英語を使う機会の無い日本で勉強をする理由は何なのか?という問いかけは、核心を突いていて私にはぐうの根もでないのですがいかがでしょうか。

「仕事の関係で長期的に海外に行くことはできないから日本で勉強せざるを得ないんだ!」という方もいると思います。それが「英語が必要な1割の方」であればもちろんその必要性はあります。ここで言っているのは、「必要ないのに(必要だと思っている)9割の人」についてです。

 
日本人のビジネス英語はどこまで役に立つ?
楽天、ユニクロのように、英語を社内公用語化して英語学習を義務づける企業で働く方にとっては、必要なくとも(いつ使うか明確ではなくとも)勉強せざるを得ない状況なのでしょう。

私は楽天やユニクロの経営戦略や実態に詳しいわけではないので何とも言えませんが、社員の全員が海外店舗で働く可能性が極めて高いという状況出ない限りは、多くの人にとって使わない英語に時間を投資していることになるのではないかと思います。

もちろん会社のお金で英語が勉強できること、そして強制力があるから嫌でも身につけられるという点をプラスに捉えるビジネスパーソンもいるかもしれません。

しかし、著者の言うように、

・「20代、30代は仕事で覚えなければならないことが山ほどあるのに、英語の勉強に時間を取られたら、肝心の仕事に集中できない」

・「この時期に身につけられなかったら、生涯仕事ができないビジネスマンのまま終わってしまう」

という主張ももっともだと思うのです。繰り返しに鳴りますが、コミュニケーションの手段である英語ができるからといって、イコール仕事ができるというわけではありません。

それでも英語を学ぶたいと思う理由は?

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私の事例として、ホテル業界のクライアント様との仕事の際には英語を勉強しようとは思わなかったと言うお話をしましたが、実は英語を勉強したいと思うきっかけになった出来事もあります。

それは、とあるカタログ撮影のお仕事で、モデルオーディションを行ったときです。

モデルには外国人の方も含まれていて、日本語を使える方もいましたが、英語でないとコミュニケーションがとれない方がほとんどでした。

私は営業として、そのオーディションや撮影を仕切る立場にいたので、モデルの方たちを控え室に誘導したり、順番を伝えるなどしてコミュニケーションを取る必要がありました。
しかし、恥ずかしながら「こちらへどうぞ」「今からご案内します」「撮影が押しているので、申し訳ないですがもう少々お待ち下さい」といった必要最低限のコミュニケーションができないのです。

目の前にいる「人」にまったく声がかけられない自分。

結局、クライアントの担当者の方は英語がぺらぺらだったので、そうした言い回しを教えて頂き、カタコトでコミュニケーションをとるようにしたのです。

実際、仕事についてはそこまで大きな支障はありませんでした。英語が話せない日本人が多いことはクライアントも分かっていることなので、そもそも私が英語で外国人の方達をアテンドすることを期待してもいなかったでしょう。

もっと言えば、仮に私がちゃんと英会話を勉強していてこの場をかっこ良く切り抜けられていたとしても、別にその能力が買われて給料が上がるわけではないでしょう。

もちろん話せた方がプラスになることは確かですが、どちらかと言えば、オーディションや撮影の事前準備や進行力の方がその場では必要です。

しかしながら、オーディションにて外国人相手に日本語と英語を使い分けて面接をするクライアントを見て、語学の壁だけで目の前にいる人ともコミュニケーションがとれない自分に愕然としたのです。

もちろん、英語が万能なわけではありませんが、世界共通言語としての立ち位置を持つ言語である以上、英語を使えるだけで多くの国の人とコミュニケーションをとれるようになるのは事実です。

この経験から、実は英語学習はビジネスのためと言うよりも、(国籍関係なく)人とコミュニケーションをとりたいとう本能的な部分こそ強い動機になるのではないかと感じました。

いつ役に立つか分からないビジネス英語の勉強よりも、外国人の恋人が(欲しい)できたからという動機の方がずっと真剣になれるはずです。

英語が話せなくてもボディランゲージや単語の羅列だけでも「コミュニケーション」はとれる、という意見ももちろん同感ですが、恥ずかしがりやの日本人に(お酒の力なくw)そうした活発なコミュニケーションを求めるのは、なかなか難しいのでは?と思います。

いつか仕事で役に立つだろうという曖昧な理由ではなくて、こうした本能的な動機で英語を勉強したいと思うようになった貴重な経験でした。

 

日本人の9割に英語はいらない
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