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【社会】

実教出版教科書を希望…やはりダメ 現場の教員「息苦しい」

 二〇一四年度に使う教科書採択で東京都教育委員会が「不適切」とした実教出版(東京)の高校日本史の教科書は、すべての都立高が使用を見送った。しかし教育現場では、教員がこの教科書を評価し、使用を模索する動きがあった。校内の教科書選びの中で、こうした現場の意向が都教委の「通知」の下に消えた経過を、ある男性教員が証言した。 (安藤恭子)

 「来年度は実教の教科書を使いたいのですが」。七月上旬にある都立高校で、日本史担当の教員ら数人が、急きょ校長に申し入れた。

 数日前には都教委が、実教出版の教科書について「使用は適切でない」とする見解を各校に示したばかり。問題視されたのは、国旗掲揚や国歌斉唱をめぐる「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」としたわずかな記述だった。

 これまでは各科目の教員が選んだ教科書が、校内の教科書選定委員会を経て都教委で採択され、そのまま使用されることが通例だったという。

 この高校でも、教員らが来年度の日本史教科書を選ぶ中で「生徒に主体的に考えさせる内容で、使いやすい」との判断や、現在も別の実教版教科書を使っていること、学力レベルに合うことから、実教版を希望していた。

 しかし、突然の都教委の見解により、教員らが望んでいた実教版教科書の使用は難しくなった。

 危機感を抱いた教員らに校長は「都教委の見解をほごにはできない」と伝えた。

 校長から再考を求められた教員らは悩んだ末、第二希望として別の教科書を、校内の選定委に挙げた。選定委では第二希望だけが検討され、使用教科書として都教委に報告された。

 男性教員は「教科書選びは、生徒の関心を高めるための教員の工夫の見せどころ。授業にまで介入されたようで、息苦しい」と経緯を振り返った。

 これに対し都教委の担当者は、「そうした動きは把握していない。教科書の採択権は都教委にある。各学校の校長が通知を踏まえ、教科書を選んだ」としている。

    ◇

 都教委の見解に反対する団体が、十八日午後六時半から文京区民センターで報告集会を開く。教委が実教出版の教科書を問題視した東京や神奈川の教員による報告があるほか、山田朗・明治大教授が「改憲の動きと教科書への攻撃」と題し講演する。資料代五百円。

◆都立高の使用ゼロ

 <実教出版の教科書採択問題> 各地の教育委員会が、実教出版の高校日本史教科書の国旗・国歌をめぐる記述を「教委の考えに合わない」などと問題視。東京都教委は6月、各都立高校に使用の適否に踏み込む異例の通知を出したほか、神奈川県教委も、実教版の使用を希望する県立高28校に再考を促し、両都県の採択校はゼロだった。埼玉県と大阪府では、実教版希望校が、教委の資料集を活用することや指導を受けることを条件に採択を決めた。

 

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