ここから本文です
[PR] 

<あんぐる@千葉>市原刑務所、交通受刑者 償いと更生の日々

毎日新聞 9月18日(水)16時22分配信

<あんぐる@千葉>市原刑務所、交通受刑者 償いと更生の日々

受刑者が最初に入る施錠可能な単独室

 千葉県市原市磯ケ谷の市原刑務所は、交通犯罪を犯した受刑者を専門に収容する全国唯一の「交通刑務所」。約200人の受刑者は、悪質な飲酒・無免許運転で人身事故を起こしたり、一瞬の気の緩みで死傷事故を招いて収容されたケースなどさまざまだ。年1度の盆法要が実施された7月26日、同刑務所で反省と償いの日々を送る受刑者らを取材した。

【刑務所の写真をもっと見る】刑務所の入り口に大きく書かれた「交通安全」の4文字

 同刑務所は1969年、現在地に開所。施設の周囲に高い塀を設けず、居住空間に厳重な施錠をしない「開放的」な処遇施設だ。受刑者の刑期は4年未満。自動車運転過失致死や同傷害が過半数を占め、次に無免許や酒気帯びによる道交法違反の罪が全体の約4割超だ。

 受刑者は入所後、まず施錠可能な「単独室」で2〜3週間を過ごし、面接や心理検査を受ける。その後、日々の刑務作業や矯正プログラムに取り組みながら、複数の受刑者で寝起きする「準開放寮」、さらに窓に格子がない「開放寮」へ移り、次第に規制の少ない自律的な生活を送るようになる。川村龍雄所長は「社会に近い状況で処遇することで、社会復帰がしやすくなる」と狙いを話す。刑務作業の一環として、敷地外の企業へ働きに出る受刑者もいるという。

 「どう償っていけばいいのか」−−。受刑中の元会社員の男性(33)は今も気持ちの整理がつかない。いつものように車で出勤途中、黄信号の交差点をそのまま直進したところ、対向の右折待ちの車と衝突。衝撃で自分の車は歩行者の列に突っ込み、女性1人が死亡、5人がけがをした。

 「妻を返してくれ」。遺族の夫からの一言が忘れられない。入所直前に授かった自分の子供は現在1歳になったが、事故のことを思い出さない日はない。「過信や慢心があった。世間では事故というが、『事件』と呼ぶべきです。許されるのであれば、被害者や遺族に直接謝罪がしたい」。男性は絞り出すように語った。

 飲食店を経営していた別の男性(50)は昨年2月、閉店後に自分の店で4合半の日本酒を飲んだ。5時間弱の睡眠を取った後、帰宅の車に乗った。交差点で左から来た車と衝突し、高齢男性を死亡させた。警察の調べで基準値以上のアルコールが検出され、驚いたという。「酒が残っていなければ、事故は避けられたのでは」と後悔が募る。男性は「自分の勝手な判断で、ご遺族につらい思いをさせた。『飲んだら乗らない』ということを忘れてはいけない」と語った。

 記者が会った2人の言葉には「人ごとではない」重さがこもり、更生に向けた同刑務所関係者の努力の跡がうかがえた。だが、県警の今年1月〜8月末の統計によると、県内の交通事故だけに限っても死者は114人と、前年より1人多いペース。交通事故による被害者、そして同刑務所に入る加害者が1人でも減ってほしいと強く思う。【黒川晋史】

最終更新:9月18日(水)17時14分

毎日新聞

 
PR

注目の情報


PR