中国人留学生:命懸けで小4救助 大阪府警が表彰
毎日新聞 2013年09月18日 12時36分(最終更新 09月18日 13時37分)
台風18号による大雨で増水した大阪市北区の淀川で大阪府高槻市の小学4年男児(9)を救助した中国人留学生、厳俊さん(26)に日中から称賛の声が相次いでいる。中国版ツイッター「微博」(ウェイボー)や中国のニュースサイトに書き込みが殺到しているほか、大阪府警には、「直接お礼を言いたい」などの電話が関東や中国地方からも舞い込み、田中法昌府警本部長は18日、「身の危険を顧みない勇気ある行動に感銘を受けた」として厳さんを表彰した。厳さんは毎日新聞の取材に「人命を助けるのに国籍は関係ない。自分の行動が日中友好のきっかけになるのならうれしい」と語った。
厳さんは16日午後5時ごろ、堤防沿いをジョギング中、「助けて」という子供の声を聞き、濁流にのまれる男児を発見した。とっさに川に飛び込み、男児を堤防に押し上げようとしたが、男児に岸にはい上がるだけの力がなく何度も失敗。自身も大量の水を飲み「自分の人生もこれまでか」と死を覚悟した。その後、力を振り絞って岸に上がり約100メートル下流まで走って先回り。ぬれた衣服を脱ぎ、近隣住民が持っていたロープを体に巻き付けて再び川に飛び込んだ。水中に消えかけた男児を右手でつかみ、左手で水をかいて必死に岸まで泳いだという。
「微博」上には、「凍りついた中日関係に新たな空気を吹き込む行動」「中国人と日本人の間にあるのは、政治ではなく温かい気持ちだ」などのコメントが1000件以上集まっている。厳さんが16日、上海市に住む両親に「携帯電話は川に流されてつながらないけど、無事だから心配しないで」とメールで連絡すると、「あなたを誇りに思う」と返信があったという。
厳さんは「戦後復興を果たした日本で経済を学びたい」と3年前に来日し、来春から大阪市立大大学院に入学予定。アルバイト先のコンビニエンスストア店長の松田庄司さん(61)は「正義感が強く、勤務態度もまじめ。放っておけなかったんでしょう」と話す。18日午後には、救助した男児の両親も厳さんに面会し感謝を伝えるという。【高橋隆輔、上海・隅俊之】