9月22日にドイツで連邦議会選挙があります。最近の世論調査ではドイツ人の76%が自分の現状に満足しているという結果が出ています。そのことからも有権者は大筋として現状維持を望んでいることがわかります。

だからメルケル首相はキャンペーン活動を殆どしていません。なぜなら、失言さえしなければたぶん彼女が勝つからです。メルケル首相は、欧州財政危機の際、南欧諸国からの要求に簡単に首を縦に振りませんでした。国民はメルケル首相のドイツの利害を守る姿勢に満足しています。ただ、「自分が投票しても、しなくても、大勢に影響はないな」という安心感が有権者に強いので、小政党を熱心に支持する一部の有権者の投票行動が、結構、全体の結果に大きく影響を及ぼす構造が出来つつあります。それを説明します。

ドイツには連邦議会と参議院があります。しかし、法案提出権、首相選出権は連邦議会にあるため、実質的には一院制です。連邦議会の定数598です。しかしドイツ独特の、超過議席制度があるので、現在の議席数は622議席です。第一党のキリスト教民主同盟は中道右派です。メルケル首相の出身党です。現在、下の図で、黒で示した各政党と連立政権を構成しています。

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第2党の社会民主党も歴史のある政党で、中道左派です。今回の選挙戦では、新鮮味のないキャンペーンを展開しています。




第二次世界大戦以降、キリスト教民主同盟と社会民主党がずっと1位、2位を争ってきました。しかし最近はそれ以外の政党の相対的地位が上がっているので、両方とも議席比率を落としています。

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ひょっとしてキリスト教民主同盟の現在のパートナーとなっている政党が議席比率を落とせば、キリスト教民主同盟はライバルの社会民主党と大同団結(グランド・コアリッション)をすることで連立政権を築かねばならないかもしれません。言い換えれば、日曜日の投票日が終わった後で、メルケル首相は忙しくなると言う事です。

ただ、メルケル首相自身が首相にとどまることは、ほぼ確実だと思います。ドイツの首相の平均在任期間は8年と、長いです。メルケル首相は現在8年目です。だから彼女がとりわけ長く首相の座に居座っているというわけではありません。

投資家からすると、ドイツの過去2年のGDP成長率が比較的低いのに、なぜメルケル首相の人気が衰えないのか不思議かも知れません。

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その答えは、下のグラフにあります。ドイツの賃金はこのところ毎年、3%以上のベースアップをしています。これはコンスタントにインフレ率より高い賃金上昇で、ドイツ庶民の暮らしは楽になっているのです。

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