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2011年2月12日 (土)

着手金1260万円!住民訴訟で高額な弁護士費用 市財政に重荷

リンク: asahi.com:住民訴訟 市財政に重荷-マイタウン佐賀.

   武雄市民病院の民営化を巡る住民訴訟で、高額な弁護士費用が市の財政に重くのしかかっている。市企画課によると、20から30の事業で事業年度の見直しや規模縮小を迫られる可能性があるといい、市民生活へのしわ寄せは避けられない。樋渡啓祐市長と、民営化に反対する市民グループや市議は互いに「責任は相手にある」と主張する。住民訴訟には行政の暴走を抑える役目があるが、そのコストについて考えさせる事例といえそうだ。(波多野陽)
   提訴は昨年5月。原告の市民グループは、市長選やリコールを目指した運動で樋渡市長と対立してきた。市が病院を不当に安く医療法人に売ったなどとして、損害分21億6100万円を樋渡市長に請求するように市に求めている。
 市は県内の複数の弁護士に代理人を依頼した。費用の目安は、2004年まで日本弁護士連合会が使っていた「着手金は訴えられた額の2%、成功報酬は4%」という基準。佐賀地裁での一審だけで約1億3千万円に上り、うち着手金4430万円を6月補正予算に計上した。その後、弁護士との折衝で着手金は1260万円に減ったが、成功報酬は決まっていない。訴訟が高裁や最高裁まで争われれば、費用はさらに増える。いまのところ最終的な額は不明だが、一般会計の規模が200億円に満たない市にとって負担は重い。
  市長は議会やブログで、弁護士費用によって子育て支援や市営住宅整備、生涯教育などの事業が停滞するのではないかとの懸念を表明。同時に、原告側の記者会見に同席して民営化反対の自説を唱えた江原一雄市議ら共産党市議の行動を「党利党略だ」と批判した。樋渡市長は取材に「住民訴訟自体は間接民主制の足りない部分を補う大切なもの」としたうえで、「市の財源は補助金をてこに、その何倍もの額の事業を生む。原告とは係争中だから何も言わないが、市議までが迷惑を顧みず裁判に乗るのはおかしい」と述べた。名指しで批判された江原氏は議会で、県が原告になった別の訴訟では弁護士費用が60万円だったことなどを挙げ、「(今回の住民訴訟では)高すぎる」と反論。取材にも「自分のやりたい事業はやる市長なのに、訴訟を政治利用して我々を攻撃しているのが明らかだ」と訴えた。
    一方、弁護士費用の影響が出そうだと市が主張する事業の現場はどうか。武雄市若木町。山あいの若木小学校が午後4時を迎え、下校する児童たちを待つ保護者の車が昇降口前に並ぶ。町の大部分は路線バス網から外れているため、遠くから通う児童には送り迎えが必要だ。市は今年度、県の全額補助を受け、ミニバンを地域に貸し出す「みんなのバス」を試験運行している。若木町での運行は2月までの3カ月間だが、本格運行の見通しは立っていない。樋渡市長は6月議会で「(弁護士費用の発生を受けて)様々な予算を見た結果、バスがうまく走らない可能性もある」と答弁した。
◇取材後記◇
 裁判の取材を重ねているうちに、簡単に退けられる住民訴訟を数多く見てきた。そのたびに、裁判に費やされた金銭と労力の責任は誰が負うべきなのか考えさせられる。今回、樋渡市長が弁護士費用をてこに政敵への批判を強めているのは確かだ。支出額には厳しい目が注がれるべきだろう。だが反対派にも、政治活動の一環として訴訟を使っている側面があるのは否定できない。武雄市の例を機に、行政と住民運動の関係について議論が深まることを期待したい。

  住民訴訟で行政側弁護士の着手金が1260万円というのも凄いが、当初着手金として4430万円を補正予算に計上したというのはべらぼうだ。
  波多野陽記者は、「裁判の取材を重ねているうちに、簡単に退けられる住民訴訟を数多く見てきた。そのたびに、裁判に費やされた金銭と労力の責任は誰が負うべきなのか考えさせられる」と述べる。「原告は勝てもしない住民訴訟をやって無駄な弁護士費用で行政に負担をかけている」という認識を持っているようだ。しかしそもそも行政側代理人の弁護士費用が高額だという波多野氏の認識自体が誤りだと思う。
  私は行政側代理人をやったことがないのでどの程度弁護士費用がかかっているか正確には知らないが、日弁連の弁護士報酬規定があった時ですら「着手金は訴えられた額の2%、成功報酬は4%」という基準ではやっていなかったはずだ。まして今は弁護士報酬は自由化されているのだからこんなべらぼうな金額を支払う理由は無い。江原氏は「県が原告になった別の訴訟では弁護士費用が60万円だった」と反論しているようだが、その程度が相場であろう。
  ちなみに本件ではどうか分からないが、住民訴訟の原告側代理人は着手金など貰わないか、貰うとしても極低額だと思う。仙台市民オンブズマンの弁護士は当たり前だが着手金などない。膨大なコピー費用も全て自己負担だ。それと対比しても、税金で賄われる行政側代理人の弁護士費用は低額であるべきだ。弁護士費用は自由化されているので、1260万円の着手金を貰って悪いということではないが、私の感覚では信じ難い金額だ。理論的に言うと、「住民訴訟は金銭給付が目的ではなくあくまで行政の適正さを確保するのが目的なので、弁護士報酬の算定に当たっては請求するよう求められた金額は一つの参考資料に過ぎない」というのが一般的な解釈だ。
  実はこの理屈で、談合事案などで住民側が勝訴しても、住民側代理人弁護士の成功報酬はかなり低額に抑えられている。しかし、住民側が勝訴した場合には、実際に談合業者などから自治体に賠償金が支払われる。そしてそのお金は自治体は請求しようとしなかったもので、住民訴訟によって初めて得らたものだ。従って、この場合はむしろ実際に得られた賠償額を基準にきちんと成功報酬が支払われてしかるべきだと思う。
  樋渡市長も税金を使うのであるから、県や住民訴訟が多い政令指定都市から弁護士費用についての情報を入手した上で予算計上すべきだった。弁護士費用が高すぎて他の事業に支障が出るなどというのでは市長として恥ずかしい。受任した弁護士も悪気はなく単に相場を知らないだけなのだろうから、1260万円についても再交渉して返して貰う努力をすべきだと思う。私が住民だったらこの弁護士費用について返還を求める住民訴訟を提起するところだ。
  またこの記事はどう考えてもミスリーディングだと思うので、波多野記者には是非住民訴訟を含めた行政訴訟における弁護士費用の実態について取材していただきたい。そしてもし本当に全国的に行政側代理人弁護士が本件のような高額な弁護士費用を得ているのだとすれば、それは由々しき問題だと思う。

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