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米国車の品質向上がもたらしたデトロイト破綻

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2013/8/1 7:00
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(2013年7月21日 Forbes.com)

 車をレンタルする人びとは、救済という失政で破綻を免れた米国の自動車メーカーの車の品質が高いことに気づく。7月にデトロイト市が破産を申請した理由は、皮肉にも現在の米国車の性能が向上したからだ。

 以前から本コラムをお読みの読者は、それは話の筋が違うのではないかと思うかもしれない。デトロイト衰退の原因はドルの下落にあると長らく言われてきた。たしかにドル安が一因であったことを見過ごすわけにいかない。

■米通貨政策と軌を一にした自動車産業の衰退

ヘンリー・フォードの生誕150周年に合わせ、フォード・モーターの往年の車を展示したイベントで。写真は1934年のフェートンV8(27日、ミシガン州)=ロイター
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ヘンリー・フォードの生誕150周年に合わせ、フォード・モーターの往年の車を展示したイベントで。写真は1934年のフェートンV8(27日、ミシガン州)=ロイター

 米国の自動車メーカーは、ゼネラル・モーターズ(GM)のサバーバンやキャデラック、コルヴェット、フォード・モーターのブロンコやリンカーンなどに代表される、図体が大きく、轟音(ごうおん)をたてて大量のガソリンを消費しながら走る車づくりを得意としてきた。だが1971年に当時のニクソン大統領がドルと金との兌換(だかん)停止という失策を犯してから、ビッグスリー(米自動車大手3社)は一気に衰退し始めた(奇妙なことに米国の自動車メーカーはこの決定を支持した)。

 それは当然のなりゆきだった。1970年代、(正貨準備のない)名目貨幣としてのドルの力が弱まり、そのドルで原油価格が決まっていた以上、ドルが下落すれば必然的にガソリン価格は高騰した。米国の誤った通貨政策が招いた原油高により、ビッグスリーは市場競争力を奪われた。ガソリン価格が高騰すると、米国車は損得に敏感な消費者に見向きもされなくなった。そこへ燃費効率の優れた外国車が登場して脚光を浴び、徐々にマーケットシェアを伸ばしていった。

 その後、1980年代のレーガン政権と1990年代のクリントン政権がきわめて健全な通貨政策を敷いたことにより、ビッグスリーは息を吹き返した(不思議なことにGMのリチャード・ワゴナー元最高経営責任者はドル安に向け、政界に圧力をかけた)。だが、その復活は短命で終わった。重商主義の立場に立つポール・オニール財務長官が率いるジョージ・W・ブッシュ政権の経済政策担当者たちは、ドルの健全な貨幣としての重要性を疑問視し、ドル安やガソリン価格の高騰、ビッグスリーの衰退を招いた。その結果、切羽詰まったクライスラーとGMは、5年近く前、政府に救済を求めたのである。

■破産を免れたことで企業の活力が奪われた

 ドル安によってビッグスリーは競争力を失い、政府による救済は単に事態を悪化させただけだった。GMとクライスラーに少なくとも倒産という選択肢が与えられていたら──トヨタや日産、フォルクスワーゲンなど、いずれかの主力メーカーに吸収されることにはなっただろうが──両社は車を生産し続け、吸収されたとしても、才能ある人材が集まったはずだ。

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